【解散の理由と経緯】自民党の派閥はなぜなくなったのか?
自民党の派閥解散を引き起こした最大の要因は、政治資金パーティーをめぐる収支報告書の不記載問題、いわゆる「派閥裏金問題」だった。
問題の本質は、派閥が政治資金を集める仕組みと、所属議員への資金還流、政治資金収支報告書の記載・管理にあった。
派閥裏金問題が解散につながった背景
自民党では、派閥が政治資金パーティーを開催し、所属議員にパーティー券の販売を依頼する慣行があった。
一部の派閥では、議員が販売ノルマを超えて集めたパーティー券収入の一部を議員側に戻す仕組みが存在し、その収入が政治資金収支報告書に記載されていない問題が明らかになった。
2023年11月以降、問題は大きく報道され、党内の政治責任や資金管理の在り方が問われるようになった。
とりわけ、清和政策研究会(旧安倍派)や志帥会(旧二階派)をめぐる問題は、自民党の政治資金管理に対する批判を強める結果となった。
岸田文雄総裁は2024年1月23日の政治刷新本部に関する説明で、派閥から「お金」と「人事」の機能を切り離す方針を示した。政策集団についても政治資金パーティーによる資金集めや人事への関与を認めない方針を打ち出した。
これは、従来の派閥政治の仕組みそのものを見直す転換点だった。
2024年から2025年までの派閥解散の時系列
各派閥は一斉に解散したわけではない。解散方針の決定と政治団体としての正式な解散には時間差があった。
- 2024年1月: 安倍派、二階派、岸田派などが解散方針を表明。森山派も解散を決定。
- 2024年4月25日: 森山派の近未来政治研究会が正式解散。裏金問題発覚後、最初に正式解散した派閥となった。
- 2024年9月3日: 岸田派の宏池会が総務省に解散を届け出た。
- 2024年12月27日: 茂木派の平成研究会が正式解散。
- 2025年6月19日: 二階派の志帥会が正式解散。
- 2025年6月25日: 安倍派の清和政策研究会が正式解散。
旧安倍派は2024年1月に解散方針を決めていたものの、残余資金の処理などに時間を要し、政治団体としての正式解散は2025年6月まで遅れた。
この手続きの完了によって、麻生派以外の旧六大派閥はすべて政治団体としての解散を終えた。
政治資金規正法の改正で何が変わった?
派閥解散と並行して進められたのが、政治資金規正法の改正だ。
2024年6月19日、改正政治資金規正法が参議院本会議で可決・成立した。
主な改正内容は次のとおり。
- 政治家の責任強化: 会計責任者が不記載・虚偽記載で処罰された場合、政治家本人も一定の条件の下で処罰対象となる仕組みを導入。
- パーティー券購入者の公開基準: 公開基準額を従来の20万円超から5万円超に引き下げ。
- 政策活動費の透明化: 支出項目や支出年月などの公開を進める仕組みを整備。
- 再発防止: 政治資金の管理や監督機能の強化を盛り込む。
ただし、法律が成立したことと、政治資金の透明性が十分に確保されたことは同じではない。制度の実効性や監視体制、運用の徹底は、その後も政治改革の重要な課題となっている。
自民党自身も、2024年6月19日の法改正成立を受けて再発防止と政治資金の透明性向上を掲げた。
【2026年の最新動向】旧派閥の再結集と新たな議員グループ
派閥解散後の自民党で注目されているのが、旧派閥の人脈を基盤とする議員グループの再結集だ。
政治団体としての派閥はなくなっても、長年同じ派閥で活動してきた議員同士の関係は続く。政策課題への対応や総裁選、党内人事などをめぐり、再び議員同士が集まる動きが出ている。
旧派閥メンバーによる会合と政策集団
2026年4月25日の福岡TNCニュースの取材報道では、自民党内で複数のグループが活動している状況が紹介された。
特に注目されるのは次の動きだ。
1.岸田元首相・茂木氏ら旧派閥メンバーの会合
旧岸田派や旧茂木派の関係者が、木曜日に会合を重ねていると報じられた。
かつて同じ派閥で活動した議員同士が、政治情勢や政策について意見交換する場として機能している。
2.高市早苗氏が顧問を務める有志グループ
高市早苗氏が顧問を務める有志の議員グループには、報道時点で85人が参加し、定期的に勉強会を開催しているという。
これは正式な派閥ではないが、参加者の規模から見ても党内で注目される政策ネットワークだ。
3.自由民主党参議院クラブ
石井準一参院幹事長らを中心とする「自由民主党参議院クラブ」には約40人が参加していると報じられた。
TNCの取材によれば、会費の徴収や定例会合を設けない緩やかな議員同士のつながりで、従来型の派閥とは運営形態が異なる。
4.武田良太氏を中心とする新グループ
2026年2月の衆院選で国政復帰した武田良太氏も、新たな政策グループを立ち上げて活動を活発化させている。
武田氏は旧二階派に所属していた政治家であり、旧派閥の人脈と新しい政治グループの動きを考えるうえで注目される存在だ。
TNCの取材では、こうした動きについて党内で「派閥回帰」ともいえる状況が広がっていると報じられている。
2026年6月、党が警戒した「派閥回帰」
グループ再結集の動きに対して、自民党執行部も対応を進めている。
2026年6月3日、テレビ朝日が報じたところによると、自民党のガバナンス委員会は、鈴木幹事長に対して組織的な人事要望を受け付けないよう提言した。
問題視されたのは、政策集団やグループが議員の推薦などを通じて、党内の人事に影響を及ぼすことだ。
2024年の派閥解散では、資金集めと人事への関与を切り離すことが改革の柱だった。そのため、形式上は派閥がなくなっても、グループが組織的な人事交渉を再開すれば、改革の趣旨が損なわれる可能性がある。
2026年5月に公表された自民党のガバナンス体制に関する報告書も、派閥が従来担ってきた情報共有、人材育成、意見集約、意思疎通の機能を、党組織として代替する必要性を指摘している。
つまり、党が目指しているのは、議員同士の交流そのものを禁止することではなく、資金や人事を特定グループが握らない仕組みへの転換だ。
派閥とグループは何が違うのか?
両者の違いを理解するには、組織の運営方法と政治資金の扱いを見る必要がある。
従来型の派閥
- 会長を中心とした組織構造がある。
- 所属議員や役職が明確になっている。
- 定期的な会合や事務所運営を行う。
- 政治資金パーティーなどを通じた資金調達の機能を持っていた。
- 総裁選や党内人事でまとまった政治的影響力を行使してきた。
現在の政策グループ・勉強会
- 特定の政策課題や政治的な考え方を共有する。
- 会員や参加者の範囲が流動的な場合がある。
- 複数のグループに関係する議員もいる。
- 従来型の派閥と同じ資金・人事機能を持つことは認められていない。
- 会合や勉強会を通じて政策的な連携を深める。
重要なのは、グループへの参加人数だけで政治的な影響力を判断しないことだ。
例えば、85人が参加する勉強会があっても、その全員が総裁選で同じ候補に投票するとは限らない。また、約40人の参議院クラブについても、全員が一枚岩で行動することを意味しない。
2026年の自民党では、組織の名称よりも、実際に誰が参加し、どのような政策で一致し、どのような場面で協力するかが重要になっている。
【政治の仕組み】自民党派閥の役割と総裁選・党内人事への影響
そもそも、自民党において派閥はなぜ長く存続してきたのか。
その理由は、派閥が単なる政治家の親睦団体ではなく、選挙、政策、人材育成、党内人事、総裁選など、政党運営の複数の機能を担ってきたためだ。
派閥が担ってきた5つの役割
1.総裁選における候補者支援
派閥の最も重要な役割の一つが、自民党総裁選での候補者支援だ。
総裁選では、国会議員票と党員・党友票が重要になる。派閥は所属議員への働きかけや支持候補の調整を行い、総裁選の結果に影響を与えてきた。
特に国会議員票をまとめる力は、総裁候補にとって大きな意味を持っていた。
2.党内人事・閣僚人事への影響
派閥は、所属議員を閣僚や党役員などの要職に送り込むための政治的な基盤でもあった。
総裁が内閣を組織するとき、各派閥の規模や支持関係が人事の調整材料になることがあった。
派閥が複数存在することで、党内の勢力均衡を保つ役割も果たしていた。
3.若手議員の育成
当選回数の少ない議員にとって、派閥は政治活動の経験を積む場所でもあった。
先輩議員から国会運営や政策形成の知識を学び、政治家としての人脈を広げる機会になっていた。
4.政策形成と意見集約
同じ政策的な考え方を持つ議員が集まり、政策課題について意見を交換することも派閥の役割だった。
派閥ごとに政策の優先順位や政治的な立場に違いがあり、党内の議論を活性化させる側面もあった。
5.選挙活動の支援
派閥は所属議員の選挙活動を支援するネットワークとしても機能してきた。
応援演説や選挙情報の共有、議員同士の協力などを通じて、候補者の政治活動を支えていた。
こうした機能は、派閥の長所として評価される一方、資金や人事を特定の組織が握ることによる不透明さという問題も抱えていた。
派閥解散後の総裁選はどう変わる?
派閥が解散したことで、総裁選の構図も変化している。
従来は、派閥単位で支持候補を決め、所属議員に投票を働きかけるという構図が目立った。
しかし2026年には、旧派閥の関係、政策グループ、議員個人の政治的立場、選挙区の事情など、複数の要素を考慮する必要がある。
例えば、旧安倍派出身者であっても、必ずしも同じ総裁候補を支持するとは限らない。無派閥議員でも、特定候補を支持する大規模なネットワークを形成することは可能だ。
したがって、総裁選を分析する際には、旧派閥別の人数だけでなく、実際の推薦人、候補者との関係、支持表明、政策上の一致点を見ることが重要になる。
党内人事は派閥の人数だけで決まらない
2026年の党内人事を考えるうえでは、麻生派の存在と旧派閥系グループの動きを分けて考える必要がある。
正式な派閥としての組織力を持つ麻生派には、会合や情報共有を継続できる強みがある。
一方、旧派閥の議員グループは、参加者が流動的であるため、政策ごとに異なる連携が生まれる可能性がある。
党執行部にとっては、こうしたグループの意見をどう吸い上げながら、特定の集団による人事支配を防ぐかが課題となる。
2026年5月の自民党ガバナンス報告書が人材育成や情報共有を党本部の機能として重視しているのも、派閥に依存しない党運営を実現するためだ。
【自民党派閥一覧2026年】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、自民党に正式な派閥はいくつありますか?
A1:正式な派閥として活動を続けているのは麻生派(志公会)の1つです。旧安倍派、旧岸田派、旧茂木派、旧二階派、旧森山派は政治団体として解散しています。
Q2:自民党で最も人数が多い派閥はどこですか?
A2:正式な派閥では麻生派です。一方、旧所属議員を分類した名簿では旧安倍派出身者が76人と最大です。これは解散済みの派閥の元所属議員数であり、現在の正式な派閥人数ではありません。
Q3:旧安倍派や旧岸田派の議員は現在どうなっていますか?
A3:派閥の政治団体が解散した後も、自民党議員として政治活動を続けています。元所属議員同士の会合や政策グループへの参加など、人的ネットワークも残っています。
Q4:無派閥議員とは何ですか?
A4:正式な派閥に所属していない自民党議員のことです。無派閥でも、勉強会や政策グループに参加することはできます。したがって、無派閥と政治的な仲間がいないことは同じではありません。
Q5:自民党の派閥は今後復活する可能性がありますか?
A5:旧派閥を母体としたグループの再結集は進んでいます。ただし、従来型の派閥がそのまま復活するには、政治資金や人事への関与をめぐる党のガバナンス規則との整合性が問題になります。今後は政策グループの活動実態が焦点になります。
まとめ:2026年の自民党は「派閥解散後の勢力再編」が焦点
2026年11月現在の自民党は、正式な派閥としては麻生派(志公会)だけが残る一方、旧安倍派、旧岸田派、旧茂木派、旧二階派、旧森山派などの元所属議員が、それぞれの人脈を維持している。
今回の派閥解散は、単に組織の名称をなくしただけではない。政治資金の調達や配分、人事への影響力を派閥から切り離し、党本部を中心とした運営に移行するための改革だった。
しかし、議員同士が政策や政治的な考え方を共有する必要性までなくなったわけではない。2026年には、旧派閥系の勉強会や有志グループ、新たな政策集団が活動を広げている。
今後の自民党の勢力図を見極めるには、次の3点が重要になる。
1. 麻生派の動向: 唯一の正式な派閥として、どの程度の組織力と政治的影響力を維持するか。
2. 旧派閥の再結集: 旧安倍派や旧岸田派などの議員が、どのような政策グループを形成するか。
3. 総裁選と党内人事: グループによる組織的な人事要望を抑えながら、どのように議員の意見を党運営に反映するか。
【プロの結論】
2026年の自民党を分析する際に、最も避けたい誤解は「派閥が解散したから党内の勢力争いもなくなった」という見方だ。
派閥という公式な組織は減ったが、政治家同士の関係、政策上の連携、総裁選に向けた支持基盤は残っている。
これからの自民党政治を正しく理解するためには、正式な派閥の所属人数、旧派閥出身者の人数、現在活動する政策グループの規模をそれぞれ区別する必要がある。
派閥の数ではなく、誰が誰と連携し、どの政策や人事で影響力を発揮するのか。 それこそが、2026年以降の自民党の勢力図を読み解く最大のポイントになる。 (出典: 自民党 派閥 一覧(Yahoo!ニュース))