【予言の出どころ】たつき諒『私が見た未来 完全版』には何が書かれていたのか
7月5日の大災害予言の出発点は、漫画家・たつき諒氏が2021年10月1日に飛鳥新社から刊行した『私が見た未来 完全版』にある。
この作品は、1999年に刊行された漫画『私が見た未来』をもとに、新たな夢の記録や解説を加えた216ページの書籍だ。出版社の商品紹介では、1999年版の表紙に「大災害は2011年3月」と記されていたことや、完全版で新たな夢日記を公開したことが紹介されている。
そして、完全版の内容紹介には、次の趣旨の記述がある。
「本当の大災難は2025年7月にやってくる」
この表現が、2025年7月に日本で巨大地震や津波が発生するという解釈につながった。
特に注目されたのが、2011年3月の東日本大震災との関係だ。1999年版の表紙に記された年月と実際の震災の発生時期が重なったことで、作品に対する関心が高まった。
ただし、ここで押さえておきたいのは、過去の出来事と夢の記述が一致して見えることと、将来の災害を科学的に予測できることは別問題だという点である。
また、出版社の公式書籍紹介によれば、本書には夢日記の解説や、漫画に描かれた内容と描かれなかった内容についての説明も収録されている。
つまり、単純に「7月5日に地震が起きる」と予告した書籍として理解するのではなく、夢を見た本人の記録と、その後に付された解釈を分けて読む必要がある。
【午前4時18分の真相】夢を見た日と災害発生日は別だった
7月5日の予言をめぐる最大の誤解が、午前4時18分という時刻だ。
SNSなどでは「2025年7月5日午前4時18分に大災害が発生する」という情報が広がった。しかし、この時刻には明確な由来がある。
2025年4月19日、出版社の飛鳥新社は、作品と関連づけられていた映画の報道について公式のお知らせを発表した。
その中で出版社は、夢日記に記録されている日時について説明している。
夢日記に記されていたのは「夢を見た日:2021年7月5日4:18AM」であり、2025年7月5日午前4時18分に大災害が起こるとは著者は一切言及していない。
これは今回の騒動を理解するうえで非常に重要な説明だ。
時系列を整理すると、次のようになる。
- 2021年7月5日午前4時18分: たつき諒氏が夢を見た日として夢日記に記録。
- 2021年10月1日: 『私が見た未来 完全版』が発売。
- 2025年7月: 本書で大災難が起きる時期として記述された月。
- 2025年7月5日午前4時18分: 夢日記の時刻と災害発生時刻が混同され、予言の具体的な日時として拡散。
さらに、映画『2025年7月5日午前4時18分』との関係も混乱を助長した。
飛鳥新社は同映画について、著者と出版社が製作・宣伝などに関与しておらず、原案・原作として正式に関与する映像化プロジェクトも存在しないと説明している。
映画のタイトルが書籍の予言内容そのものだと受け取られたことも、誤解が広がった一因だった。
ここでの検証結果は明確だ。午前4時18分は2021年の夢を見た時刻であり、2025年の災害発生時刻ではない。
【実際に何が起きた?】2025年7月5日のトカラ列島近海M5.4を検証
予言が注目された2025年7月5日、日本では実際に地震が発生した。
午前6時29分、鹿児島県のトカラ列島近海を震源とする地震が起き、鹿児島県十島村で最大震度5強を観測した。
気象庁の発表による確定前の暫定値は、マグニチュード5.4、震源の深さ19kmだった。
また、気象庁はこの地震について、津波の心配はないと発表している。
7月5日の地震の基本データ
| 項目 | 気象庁の発表内容 |
|---|---|
| 発生日 | 2025年7月5日 |
| 発生時刻 | 午前6時29分 |
| 震源地 | トカラ列島近海 |
| マグニチュード | M5.4(暫定値) |
| 震源の深さ | 19km |
| 最大震度 | 5強 |
| 主な観測地域 | 鹿児島県十島村 |
| 津波 | 心配なし |
この地震だけを切り取ると、「7月5日に地震が起きた」という部分が予言と一致したように見える。
しかし、実際の地震活動を前後の経緯まで含めて確認すると、異なる実態が浮かび上がる。
7月5日だけではなかったトカラ列島の地震活動
トカラ列島近海では、2025年6月21日ごろから地震活動が活発化していた。
特に7月2日にはM5.6、7月3日にはM5.5の地震が発生。7月3日の地震では最大震度6弱を観測している。
つまり、7月5日の地震は突然その日に始まった異常現象ではなく、すでに活発化していた一連の地震活動の中で発生したものだった。
気象庁の2025年8月12日の発表では、6月21日以降に震度1以上を観測した地震は、同日16時時点で2,271回に達していた。
その後、7月20日ごろから活動は低下し、大きな地震の回数も減少した。ただし、気象庁の2026年版資料では、2026年1月時点でも地震活動が継続していたことが記録されている。
この経緯からも、7月5日の地震を特定日の予言が的中した証拠として扱うことには無理がある。
【気象庁の見解】日時と場所を特定した地震予測は可能なのか
7月5日の予言を科学的に検証する際、最も重要な判断材料となるのが気象庁の公式見解だ。
気象庁は、地震予知について、発生する時期・場所・規模という3つの要素を精度よく限定して予測することだと説明している。
例えば「今後1年以内に日本のどこかでM5程度の地震が起こる」という予測では、発生する可能性が高くても、実際の防災に役立つ情報としては限定的だ。
一方、「1週間以内に東京直下でM6~7の地震が起きる」といった具体的な予測は、現在の科学的知見では高い確度で行うことが難しい。
気象庁の公式FAQには、次のような説明がある。
一般に、日時と場所を特定した地震を予知する情報はデマと考えられます。
これは特定の予言だけに対する見解ではない。地震予知に関する現在の科学的な限界を説明したものだ。
地震予測と地震予知は何が違う?
混同されやすいのが、科学的な地震リスク評価と、特定日時を断定する予言の違いだ。
| 情報の種類 | 内容 | 科学的な位置づけ |
|---|---|---|
| 長期評価 | 今後数十年の地震発生確率など | 研究・観測に基づく評価 |
| 地震活動の監視 | 震源、規模、発生回数などの観測 | 実際の観測データ |
| 地震臨時情報 | 異常な観測状況などを踏まえた防災情報 | 気象庁の公式情報 |
| 日時を断定する予言 | 特定の日・時刻・場所で発生すると断言 | 科学的な予知とは認められない |
特に注意したいのは、南海トラフ地震に関する情報だ。
南海トラフについては、プレートの沈み込みや過去の地震活動などを調査し、長期的な発生リスクや異常な地殻活動の有無を評価している。
これは、地震の発生日を当てる予言とは根本的に異なる。
また、大きな地震が起きた後に、次の大きな地震の発生日時を特定できるわけでもない。気象庁は余震についても、具体的な日時や場所を高い確度で予測することはできないと説明している。
【SNSデマの拡散理由】なぜ7月5日の予言は海外にまで広がったのか
7月5日の大災害予言が国内外に広がった背景には、単なる漫画作品への関心だけでは説明できない情報拡散の構造があった。
大きく分けると、3つの要素が考えられる。
1. 過去の出来事との一致が注目された
1999年版の表紙に記された「大災害は2011年3月」という年月と、実際に発生した東日本大震災との関係が話題になった。
この過去の一致が、2025年7月の記述にも現実性があるという印象を与えた。
ただし、過去の出来事を後から夢の記録と照らし合わせることと、将来の地震を再現性のある方法で予測することは異なる。
2. 具体的な時刻や津波の情報が加わった
「2025年7月」という記述に、夢日記の午前4時18分という時刻が結びついた。
さらにSNS上では、巨大津波や日本列島への甚大な被害といった強い表現が加わり、元の記述から離れた解釈が広まっていった。
災害に関する情報は、人々の生命や家族の安全に直結するため、不安を刺激する内容ほど注目を集めやすい。
3. 海外のインフルエンサーや予言情報との結びつき
特に大きな影響が見られたのが香港だった。
共同通信の2025年7月の報道では、漫画をきっかけとした噂に加え、香港の風水師などが日本の災害について発信したことも、情報拡散を後押ししたと報じられている。
SNS上では、もともとの作品の記述と、別の人物による予言や解釈が混ざり、ひとつの大きな災害予測であるかのように受け取られる状況が生まれた。
訪日観光客への影響は実際にあったのか
予言の影響は、ネット上の議論だけにとどまらなかった。
2026年1月21日の観光庁長官会見では、2025年の香港からの訪日者数について、約252万人で前年比6.2%減少したと説明された。
さらに観光庁長官は、7月5日の大地震の噂がSNSで広がったことで旅行商品のキャンセルや航空便の減便が発生し、年間の訪日者数減少の大きな要因になったとの認識を示している。
観光庁長官会見・2026年1月21日
一方、2025年の日本全体の訪日外国人旅行者数は約4,268万人で、過去最高を記録している。
そのため、7月5日の噂による影響は、訪日観光市場全体が縮小したという話ではなく、特定の国・地域や旅行商品の予約に強く表れた問題として捉えるべきだ。
科学的根拠のない情報でも、旅行のキャンセルや地域経済への影響を引き起こす。気象庁も2026年版の広報資料で、2025年の風説による国内外への影響を取り上げている。
【2026年最新】地震予知情報と今すぐ確認したい防災対策
2026年11月現在、7月5日の予言とは別に、日本では地震活動の観測や長期的なリスク評価が続けられている。
特に注目したいのが、南海トラフ地震とトカラ列島近海の地震活動だ。
南海トラフ地震の最新情報
気象庁が2026年10月7日に発表した第110回評価検討会の南海トラフ地震関連解説情報では、南海トラフ周辺の地殻活動について評価が行われた。
その結果、同日時点では、大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていないとされた。
ただし、これは南海トラフ地震が起きないという意味ではない。
気象庁は、南海トラフ沿いのM8~9クラスの大規模地震について、平常時から今後30年以内の発生確率が高いと評価している。
つまり、特定の日付に恐怖を集中させるのではなく、長期的なリスクを踏まえた備えが必要になる。
トカラ列島近海の地震活動はどうなった?
2026年版の気象庁資料によれば、2025年6月から活発化したトカラ列島近海の地震活動は、7月20日ごろから低下したものの、2026年1月時点でも継続していた。
この活動は過去の同地域の地震活動と比較しても、発生回数が非常に多かったと評価されている。
このような地震活動の変化は、実際の観測データに基づいて判断されるものだ。特定の予言と結びつけるのではなく、気象庁の発表する地震情報や防災情報を確認することが大切だ。
2026年に確認しておきたい地震への備え
地震は予言された日にだけ発生するものではない。いつ起きても対応できるよう、日常生活の中で準備を整えておきたい。
気象庁が案内している基本的な対策を中心に、確認したい項目をまとめた。
家庭内の安全対策
- 本棚や食器棚、冷蔵庫などの家具を固定する。
- 寝室や出入口の周辺に倒れやすい家具を置かない。
- 住宅の耐震性を点検する。
- 懐中電灯や携帯ラジオ、モバイルバッテリーを準備する。
非常用品の準備
- 飲料水を確保する。
- 保存可能な食料や非常食を備蓄する。
- 常備薬や衛生用品、携帯トイレを用意する。
- 防災用品を持ち出しやすい場所に置く。
避難・連絡方法の確認
- 自宅や職場周辺のハザードマップを確認する。
- 地震や津波が発生した際の避難場所を把握する。
- 家族との連絡方法や集合場所を決める。
- 高齢者や子どもなど、避難に支援が必要な人の行動を考えておく。
これらは気象庁が示している地震対策とも一致する。
特に海岸付近にいる場合は、地震の揺れだけで津波の危険性を判断しないことが大切だ。津波警報や注意報が発表された場合は、自治体などの避難情報に従って速やかに高い場所へ避難する。
【プロの結論】予言を信じるかどうかより、情報の根拠を見極める
7月5日の大災害予言を検証すると、重要なのは次の3点に集約できる。
1. たつき諒氏の書籍には2025年7月に大災難が起きるという夢の記述があるが、2025年7月5日午前4時18分という発生日時を指定したものではない。
2. 2025年7月5日には実際にトカラ列島近海でM5.4・最大震度5強の地震が起きたが、津波を伴う日本全体の大災害とは異なる。
3. 気象庁は日時と場所を特定した地震予知について、現在の科学技術では困難であると説明している。
書籍を夢の記録や漫画作品として読むことと、その内容を現実の防災判断に使うことは分けて考えたい。
地震への備えは必要だが、根拠のない日付指定の情報に振り回される必要はない。
【7月5日の大災害予言】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:たつき諒氏は2025年7月5日に大地震が起きると予言したのですか?
A1:出版社の公式説明によると、著者は2025年7月に大災難が起きるという夢を記述していますが、7月5日という具体的な発生日を指定していません。午前4時18分も、2021年7月5日に夢を見た時刻です。
Q2:2025年7月5日に実際に地震は起きましたか?
A2:起きました。午前6時29分にトカラ列島近海でM5.4の地震が発生し、鹿児島県十島村で最大震度5強を観測しました。気象庁は津波の心配はないと発表しています。ただし、この事実だけで予言が的中したとは判断できません。
Q3:2025年7月5日の地震で津波は発生しましたか?
A3:7月5日午前6時29分のトカラ列島近海の地震について、気象庁は津波の心配はないと発表しました。巨大津波が発生したという情報とは区別する必要があります。
Q4:2026年にも7月5日のような大災害予言はありますか?
A4:特定の日付を指定する予言がSNSなどで流れることはありますが、日時・場所・規模を特定する地震予知は現在の科学では困難です。気象庁の公式発表や地震情報を確認してください。
Q5:日本で今後、大地震が起きる可能性はありますか?
A5:あります。日本は地震活動が活発な地域であり、南海トラフ地震などの長期的なリスクも評価されています。ただし、発生日を正確に予測できるわけではありません。日常的な備蓄や家具の固定、避難経路の確認が重要です。
まとめ:7月5日の予言の真相と2026年に必要な防災意識
7月5日の大災害予言は、たつき諒氏の『私が見た未来 完全版』に記された夢の内容をきっかけに、SNSを通じて国内外に広がった。
特に重要なのは、2021年7月5日午前4時18分という夢を見た日時が、2025年の災害発生日時として誤って解釈されたことだ。出版社も2025年4月の公式発表で、この点を明確に説明している。
2025年7月5日にはトカラ列島近海でM5.4・最大震度5強の地震が発生した。しかし、津波の心配はなく、予言されていたとされる日本全体を襲う巨大災害とは異なる出来事だった。
2026年11月現在、気象庁は地震活動の監視と長期評価を継続している。南海トラフについても、平常時と比較して特段の変化が確認されていないという最新評価と、長期的な発生リスクの高さを併せて理解する必要がある。
大切なのは、予言された日を恐れることではない。科学的根拠のある情報を選び、いつ起きるかわからない地震に備えることだ。
7月5日の騒動から学ぶべき最大の教訓は、災害への不安を拡散することではなく、正確な情報と日頃の備えによって自分や家族の命を守ることにある。 (出典: 7 月 5(Yahoo!ニュース))