【結論】殺害予告ランキングは公的に存在する?警察庁の統計を検証
最初に押さえておきたいのは、殺害予告と脅迫罪の認知件数は同じ数字ではないという点です。
警察庁の犯罪統計では、刑法犯の罪種として「脅迫」が集計されています。しかし、その中には生命への危害だけでなく、身体、自由、名誉、財産などに関する脅迫も含まれます。
つまり、警察庁が公表する脅迫の件数を、そのまま殺害予告の件数として扱うことはできません。
また、殺害予告には、SNSの公開投稿、個人間のダイレクトメッセージ、掲示板への書き込み、電話や手紙による予告など、さまざまな形態があります。これらを横断して殺害予告だけを抽出した全国統一のランキングは公表されていません。
公的データから確認できるのは、主に次の3つです。
- 脅迫の認知件数:警察が犯罪として認知した件数
- 脅迫の検挙件数:警察が事件を検挙した件数
- 脅迫の検挙人員:検挙された人の数
この3つを区別することが、ネット上のランキングや犯罪情報を正しく読む第一歩です。
【2026年最新】殺害予告に関連する脅迫の件数推移
2026年11月1日時点で確認できる警察庁の最新資料には、2025年の年間確定値と、2026年1月から9月までの暫定値があります。
2025年の脅迫の認知件数は5,170件でした。前年の4,502件から668件増加し、増加率は約14.8%です。
さらに、2026年1~9月の認知件数は4,432件。前年同期の3,789件と比較して643件、17.0%増加しています。
この数字からは、脅迫全体の認知件数が増加している状況を読み取れます。ただし、増加した643件がすべてSNS上の殺害予告という意味ではありません。警察庁の統計における脅迫全体の数字です。
過去6年間の脅迫認知件数
警察庁の犯罪統計資料から、2020年から2025年までの推移を整理すると、次のようになります。
2026年は9か月間の数字であり、年間確定値ではありません。2025年以前の年間データと単純に比較しないことが大切です。
年次別の公的統計と地域別データ
以下は警察庁の犯罪統計資料をもとにした比較です。地域別の数字は、殺害予告ではなく、2025年の脅迫認知件数を示しています。
2025年の脅迫の検挙件数は4,219件、検挙人員は3,505人、検挙率は81.6%でした。検挙件数と検挙人員は別の指標であり、1件の事件に複数の被疑者が関係する場合などもあるため、同じ数字にはなりません。
また、検挙件数には過去に認知された事件の検挙が含まれる場合があります。認知件数と検挙件数を単純に同じ期間の事件の解決割合と解釈するのは適切ではありません。
これらの数字は警察庁の犯罪統計資料に基づいています。法務省の令和7年版犯罪白書も、脅迫の認知件数や検挙率の長期的な推移を掲載しています。
【都道府県別】殺害予告が多い地域はどこ?ランキングの真相
都道府県別の比較では、東京都、大阪府、愛知県などの大都市圏が上位に並びます。
ただし、ここでいう順位は、2025年の脅迫認知件数に基づくものです。殺害予告だけの発生件数を比較した順位ではありません。
東京都が最多となる背景
東京都は249件で全国最多でした。大阪府は206件、愛知県は196件です。
人口が多い地域では、居住者や事業所、学校、公共施設などの数も多く、警察が取り扱う事件の総数にも影響します。そのため、認知件数の多さだけで地域の危険度を判断することはできません。
例えば、東京都の249件と人口の少ない県の数件を比較しても、住民一人当たりの発生リスクが何倍なのかまでは分かりません。
都道府県別の比較で注意すべき3つのポイント
1. 人口規模の違い
人口が多い地域ほど、事件の認知件数が多くなる可能性があります。地域の実態を比較するなら、人口10万人当たりの件数などの補正が必要です。
2. 殺害予告と脅迫全体の違い
統計上の脅迫には、生命への危害以外を告知する行為も含まれます。地域別の脅迫件数を殺害予告の多い地域と読み替えることはできません。
3. 認知件数と実際の投稿数の違い
一つの投稿が複数の人に影響を与える場合や、同じ相手に何度もメッセージが送られる場合があります。投稿数、被害者数、事件数は必ずしも一致しません。
したがって、2025年の都道府県別データは脅迫全体の地域的な傾向を確認する資料として利用し、殺害予告の危険度を判定するランキングとは区別する必要があります。
【SNSの実態】2026年に発生した殺害予告・脅迫事件
統計だけでは分からないネット上の脅迫事件の特徴は、実際の報道事例から確認できます。
2026年には、選挙期間中の危険投稿や、個人間のSNSメッセージによる脅迫事件が報道されました。
2026年2月:衆議院選挙期間中に危険投稿336件
2026年2月12日、警察庁は衆議院選挙期間中に確認されたSNS上の危険投稿について公表しました。
報道によると、対象期間は1月23日から2月7日までの16日間。候補者や警護対象者に危害を加えることを示唆する投稿が336件確認されました。
投稿の中には高市総理への危害を示唆するものがあり、書き込みを行った40代男性が実際に演説会場に現れた事例もありました。警察は事前に人物を特定し、警備部隊が会場で男性を隔離する対応を取っています。
また、岸田元総理への殺害を示唆する投稿では、SNS事業者への情報開示要請などを通じて投稿者が特定され、警告が行われたと報じられました。
この336件は、選挙期間中に確認された危険投稿の総数です。336件すべてが殺害予告だったという意味ではありません。
2026年5月:札幌市で知人母子への脅迫容疑
2026年5月12日の北海道文化放送の報道では、札幌市で知人の女性とその11歳の娘に対してSNSのメッセージ機能を使い、生命への危害を示す内容を送った疑いで、42歳の会社員の女が逮捕された事件が取り上げられました。
警察によると、メッセージの送信期間は5月3日ごろから10日ごろ。被害関係者が10日に110番通報し、警察が捜査した結果、11日に逮捕されました。
報道では、逮捕された女は容疑を認めているとされています。被害者との詳しい関係や動機については、警察が調べている段階でした。
この事件で注目すべきなのは、不特定多数に向けた公開投稿ではなく、知人間のメッセージ機能が脅迫に使われた点です。
2026年9月:元交際相手へのSNS脅迫で21歳男性を逮捕
2026年9月29日、北海道文化放送は、SNSで元交際相手の10代女性に危害を加える内容のメッセージを送った疑いで、21歳の会社員の男が逮捕されたと報じました。
警察によると、問題となったメッセージは7月12日に送信されたものです。女性から9月16日に警察へ相談があり、捜査を経て28日に逮捕されました。
警察は、同様のメッセージが複数回送られていた可能性も含めて調べていると報じられています。
この事例は、SNS上の脅迫が公開投稿に限らず、元交際相手など身近な関係の中でも発生することを示しています。
殺害予告は冗談なら問題ないのか
警察庁は、インターネット上の犯行予告について、SNSや掲示板への爆破予告・殺人予告などを例示し、冗談やいたずらのつもりでも許されないと注意喚起しています。
犯行予告が確認されれば、対象施設の警戒、危険物の確認、周辺住民の避難、イベントの中止、休校、対象者の身辺警戒などが必要になる場合があります。
実際に2026年の選挙期間中にも、危険投稿への対応として警備体制が強化されました。投稿者本人だけでなく、対象者や施設、利用者などにも影響が及ぶ問題です。
【法律】殺害予告で脅迫罪は成立する?成立要件と刑罰
殺害予告が法的にどのように扱われるかを理解するには、刑法222条の脅迫罪を確認する必要があります。
脅迫罪の成立要件
刑法222条では、生命、身体、自由、名誉または財産に対して害を加える旨を告知し、人を脅迫する行為を処罰対象としています。
また、本人だけでなく、親族に対する危害を告知した場合も同条の対象になります。
殺害予告は生命への危害を告知する行為に当たり得るため、メッセージや投稿の内容、対象者との関係、前後の経緯などを踏まえて脅迫罪の成立が判断されます。
具体的な判断では、単に強い言葉が使われたかだけでなく、その言動が一般的に人を畏怖させる程度の害悪の告知に当たるかなどが問題になります。被害者が実際に恐怖を感じたと述べたかどうかだけで、機械的に決まるものではありません。
脅迫罪の刑罰は?
2026年現在の刑法222条による刑罰は、次のとおりです。
刑法222条:脅迫罪
拘禁刑
罰金
さらに、脅迫や暴行を用いて相手に義務のない行為をさせたり、権利の行使を妨害したりする場合は、刑法223条の強要罪が問題になります。
強要罪の刑罰は3年以下の拘禁刑で、未遂も処罰対象です。
なお、2025年6月1日から懲役と禁錮が廃止され、拘禁刑が導入されました。そのため、古い解説記事にある「2年以下の懲役」という表記は、現在の条文とは異なります。
SNSでの書き込みも処罰対象になる?
脅迫の手段は、対面での発言に限定されません。SNSの投稿、ダイレクトメッセージ、掲示板、電子メールなどを利用した場合でも、内容や状況によって刑事責任が問われる可能性があります。
また、学校や会社、公共施設などへの犯行予告では、脅迫罪以外の犯罪が問題になる場合もあります。具体的な適用罪名は行為の内容や証拠によって異なります。
「匿名アカウントだから特定されない」「削除すれば証拠が残らない」という認識も正しくありません。2026年の選挙関連事例でも、事業者への開示要請などを通じて投稿者が特定されたケースが報じられています。
【通報先】殺害予告を受けた・発見した場合の正しい対応
自分や家族、知人に対する殺害予告を発見した場合、最も優先すべきなのは安全の確保と警察への情報提供です。
緊急性に応じた警察への通報先
110番:緊急の事件・事故
具体的な危害が迫っている、相手が近くにいる、実際に接触されているなど、直ちに警察官の対応が必要な場合に利用します。
#9110:警察相談専用電話
緊急の出動を要しない脅迫や、ネット上の危険投稿について警察に相談したい場合の窓口です。発信地域を管轄する警察本部などにつながります。
最寄りの警察署
投稿内容やメッセージなどの証拠を提示しながら、被害相談や届出について相談できます。
警察庁も、インターネット上で犯行予告を発見した場合には警察への通報を呼びかけており、緊急の場合は110番を利用するよう案内しています。
通報前に保存しておきたい証拠
SNS上の殺害予告は、投稿が削除されたり、アカウントが変更されたりする可能性があります。警察に相談する前に、可能な範囲で次の情報を保存しておくと役立ちます。
- 投稿やメッセージのスクリーンショット
- 投稿が掲載されているページのURL
- 投稿者のアカウント名・ID
- 投稿日時やメッセージの受信日時
- 前後のやり取りや関連するメッセージ
- 相手との関係や、これまでに起きた出来事
警視庁も、犯行予告の内容、掲載されたサイトのURL、投稿者のアカウント情報などを保存するよう案内しています。
証拠を残した後は、相手に直接反論したり、個人情報を公開したりせず、警察やSNS運営会社の適切な窓口に相談してください。投稿を拡散してしまうと、被害が広がる可能性もあります。
【プロの結論】殺害予告ランキングを見るときの判断基準
犯罪統計を調べるときは、次の4つを確認することで、誤った情報に惑わされにくくなります。
第一に、数字の対象が何かを確認すること。殺害予告、脅迫罪、ネット上の危険投稿は、それぞれ集計対象が異なります。
第二に、年間確定値と暫定値を区別すること。2026年1~9月の4,432件は、9か月間の暫定値です。2025年の年間5,170件とは同じ条件の比較ではありません。
第三に、認知件数と検挙人員を混同しないこと。事件の数と検挙された人数は別の統計指標です。投稿数や被害者数とも一致しません。
第四に、地域別の数字を危険度ランキングと誤解しないこと。東京都が最多という結果だけで、東京都民がほかの地域より何倍も殺害予告の被害に遭うと判断することはできません。
この4つを踏まえれば、見出しだけが刺激的なランキング記事と、公的統計に裏付けられた犯罪情勢の分析を見分けやすくなります。
【殺害予告ランキング】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年最新の殺害予告件数は何件ですか?
A1:殺害予告だけの全国統一件数は公表されていません。関連する脅迫全体では、2026年1~9月の認知件数が4,432件で、前年同期比17.0%増でした。
Q2:殺害予告が最も多い都道府県はどこですか?
A2:殺害予告単独の都道府県別ランキングはありません。2025年の脅迫全体の認知件数では、東京都が249件で最多、大阪府が206件、愛知県が196件で続いています。
Q3:SNSで「殺す」と書き込むと必ず脅迫罪になりますか?
A3:必ず成立するわけではありません。刑法222条の要件に照らし、投稿内容や対象者、前後の経緯などを踏まえて判断されます。ただし、冗談や匿名アカウントを理由に犯罪にならないと考えるのは危険です。身の危険が迫っている場合は110番、緊急でない相談は#9110を利用してください。
まとめ:殺害予告ランキングの数字に惑わされないために
2026年の最新公的統計を確認すると、殺害予告だけを対象とした全国ランキングは存在せず、警察庁が公表しているのは脅迫全体の認知件数や検挙状況です。
2025年の脅迫認知件数は5,170件。2026年1~9月は4,432件で、前年同期から17.0%増加しました。脅迫全体の認知件数が増加していることは、2026年の犯罪情勢を考えるうえで見逃せない動きです。
都道府県別では東京都が249件で最多でしたが、これは殺害予告の件数ではありません。人口規模や犯罪の認知状況などを考慮せず、地域の危険度を順位付けすることはできません。
また、2026年の選挙期間中の危険投稿336件や、札幌市などで発生したSNSを通じた脅迫事件からは、ネット上の言葉が現実の警備や個人の安全に影響する実態が確認できます。
今後、SNS上の脅迫をより正確に把握するためには、脅迫全体の統計に加えて、犯行予告の媒体、対象、地域、被害状況などを区別した公的な情報公開が求められます。
「殺害予告ランキング」という言葉だけで地域や人物の危険性を判断せず、警察庁の犯罪統計、法務省の犯罪白書、警察の公式発表を照らし合わせること。それが、2026年のネット上の脅迫事件の実態を正しく理解するための判断基準です。
主な参考資料:警察庁「令和7年の犯罪」「令和8年1~9月犯罪統計」「インターネット上における犯行予告への対応」、法務省「令和7年版犯罪白書」、e-Gov法令検索「刑法」、北海道文化放送・TBS NEWS DIG・テレビ朝日ニュースの2026年報道。 (出典: 殺害 予告 ランキング(Yahoo!ニュース))