いじめはなぜ起こる?加害者の心理と集団構造、2026年最新統計から防止策まで徹底解説
いじめはなぜ起こるのか。その原因は、加害者個人の性格や家庭環境だけでは説明できない。相手より優位に立ちたいという心理、集団内の力関係、周囲の同調圧力、傍観者の沈黙、そして学校環境の問題が複雑に絡み合い、いじめを生み出している。SNSの普及によって、教室で始まった嫌がらせがインターネット上に広がり、学校の外でも被害が続くケースも深刻な課題になっている。
2026年11月1日時点で確認できる最新の全国年次統計である文部科学省の令和6年度調査では、いじめの認知件数は769,022件に達し、過去最多を更新した。重大事態も1,404件に上っている。なお、当初の公表通知本文には1,405件と記載されているが、2026年1月16日更新の調査結果概要では1,404件となっている。本記事では最新の修正版の数字を基準に、いじめが発生する心理的・社会的な仕組みと、家庭・学校・社会が取り組むべき対策を解説する。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- いじめが起こる理由:承認欲求や劣等感、支配欲、ストレス、集団内の序列、同調圧力など複数の要因が関係する。
- 2026年最新の統計:令和6年度のいじめ認知件数は769,022件、重大事態は修正版で1,404件。重大事態の34.9%は、それ以前にいじめとして認知されていなかった。
- 解決の鍵:加害者への適切な指導だけでなく、傍観者を生まない環境づくり、学校の組織的対応、SNSを含む早期発見が欠かせない。
【2026年最新】いじめの認知件数約77万件!日本の学校で何が起きているのか
いじめがなぜ起こるのかを考える前に、現在の日本の学校でどの程度の問題が確認されているのかを把握しておきたい。
文部科学省が2025年10月29日に公表し、2026年1月16日に一部修正した「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校におけるいじめの認知件数は769,022件だった。
前年度の732,568件から36,454件増加し、増加率は5.0%。児童生徒1,000人当たりでは61.3件となり、調査上の過去最多を記録している。
令和6年度のいじめ認知件数と重大事態
学校種別に見ると、小学校の認知件数が圧倒的に多い。小学校では610,612件、中学校では135,865件、高等学校では18,891件、特別支援学校では3,654件だった。
小学校だけで全体の約8割を占める点は見逃せない。いじめは思春期特有の問題だと思われがちだが、実際には小学校段階から予防教育や人間関係への支援を行う必要がある。
さらに深刻なのが、重大事態の発生件数だ。
文部科学省の修正版資料では、令和6年度の重大事態は1,404件。前年度の1,306件から98件、7.5%増加した。重大事態のうち、490件、全体の34.9%は、重大事態として把握される以前にはいじめとして認知されていなかった。
これは、いじめが発生していなかったという意味ではない。被害が深刻化してから初めて問題が表面化したケースが相当数存在することを示している。
いじめの解消率は76.1%にとどまる
同調査によると、令和6年度末時点で解消していたいじめは585,349件で、解消率は76.1%だった。前年度の77.5%から1.4ポイント低下している。
一方、182,511件、23.7%は解消に向けて取り組んでいる段階だった。残る1,162件はその他に分類されている。
ここで注意したいのは、統計上の「解消」は、単に加害行為が一度止まった状態を指すわけではないことだ。原則として、いじめに関係する行為が少なくとも3か月を目安に止んでいること、被害を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じていないことという2つの要件を満たす必要がある。
そのため、学校がいじめを認知した後も、継続的な観察と本人への確認が必要になる。
1,405件と1,404件、どちらが正しいのか
検索結果や報道資料では、令和6年度の重大事態を1,405件と紹介しているものもある。これは文部科学省の2025年10月29日付通知本文に記載された数字だ。
一方、文部科学省の調査結果掲載ページでは、令和6年度の調査結果概要が2026年1月16日更新版として掲載されており、その修正版には1,404件と記載されている。
したがって、2026年時点で最新の修正版を参照する場合は1,404件を基準にするのが適切だ。1件の差ではあるが、統計を引用する際には公表時期と資料の版を確認する必要がある。
また、認知件数の増加を、そのまま実際のいじめの発生数が同じ割合で増えたと解釈することもできない。文部科学省は、法の定義への理解、アンケートや教育相談の充実、1人1台端末を使った心の健康観察、ネット上のいじめの積極的な認知なども増加の背景として挙げている。
【いじめはなぜ起こる?】加害者の心理的特徴と学校環境に潜む原因
いじめの原因を考えるとき、最初に思い浮かぶのは加害者の心理だろう。なぜ他人を傷つけるのか。なぜ相手が嫌がっていると分かっていても行為を続けるのか。
その背景には、承認欲求、劣等感、ストレス、支配欲、共感性の不足などがある。ただし、すべての加害者に共通する性格があるわけではない。いじめは個人の心理だけでなく、その行動が許容される集団や環境によっても発生しやすくなる。
1. 優位に立ちたいという支配欲
いじめを行う理由の一つに、他人を支配することで自分の優位性を確認したいという心理がある。
学校生活では、運動能力、学業成績、外見、会話力、友人関係などが、集団内での立場を左右する場合がある。こうした状況で、自分の存在感を示すために、立場の弱い相手を攻撃する子どもがいる。
相手をからかったときに周囲が笑う、命令に従わせることができる、仲間外れにすることで集団を動かせる。こうした経験が繰り返されると、攻撃行動が自分の立場を強める手段として学習される可能性がある。
特に、周囲が笑ったり同調したりすると、加害者は自分の行為が集団に受け入れられていると誤解しやすい。
2. 劣等感や承認欲求を満たそうとする心理
法務省の人権啓発資料では、いじめの心理的背景として、欲求不満の解消、劣等感の補償、周囲からの注意を得ようとする行動などが挙げられている。
自分に自信がない、周囲から認められていない、家庭や学校でストレスを抱えているといった状況で、他者を攻撃することで一時的に優越感や存在感を得ようとする場合がある。
例えば、自分が集団内で注目されていないと感じている子どもが、特定の相手を笑いものにすることで周囲の関心を集めようとするケースだ。
ただし、劣等感や家庭内のストレスがあるからといって、必ずいじめを行うわけではない。苦しい状況にあることと、他人を傷つける責任は分けて考える必要がある。
3. 共感性の不足と行為の正当化
加害者の中には、相手が感じている苦痛を十分に理解できない、あるいは理解しようとしない場合がある。
「冗談だった」「遊びのつもりだった」「みんなもやっていた」という説明は、加害行為を軽く捉える典型的な反応だ。
しかし、いじめに該当するかどうかを判断するうえで、加害者が冗談だと思っていたかどうかは決定的な基準ではない。被害を受けた側が心身の苦痛を感じているかどうかが重要になる。
悪意がなかったという説明だけで、被害の事実がなくなるわけではない。
4. 学校環境と人間関係の固定化
いじめは、個人の心理だけでなく、学校の人間関係や組織の雰囲気にも左右される。
例えば、クラス内で特定の生徒が強い発言力を持っている場合、ほかの生徒がその人物に逆らえなくなることがある。部活動やグループ活動でも、上下関係が過度に強くなると、立場の弱い生徒が不当な扱いを受けても声を上げにくくなる。
また、教職員同士の情報共有が不十分な学校では、休み時間のトラブル、SNS上の嫌がらせ、部活動での人間関係などが個別の問題として処理され、全体像が見えなくなることがある。
重要なのは、いじめが起きたときに個々の教師の対応能力だけに依存しない仕組みを整えることだ。学校全体で情報を共有し、問題を早期に把握できる環境が求められる。
5. ストレスのはけ口として他人を攻撃する
学業や部活動での競争、友人関係のトラブル、家庭での不安など、子どもが抱えるストレスは多様だ。
自分の感情をうまく整理できない場合、その不満を他人にぶつけてしまうことがある。特に、反撃してこない相手や、集団内で孤立している相手が攻撃対象になりやすい。
しかし、ストレスは背景要因であって、いじめを許す理由にはならない。加害行為を止めることと、加害者が抱える問題への支援を同時に進める必要がある。
【集団心理の構造】加害者・被害者・観衆・傍観者の関係がいじめを長期化させる
いじめは、加害者と被害者の2人だけで成立しているわけではない。
法務省の人権啓発資料では、いじめの構造を、加害者、被害者、観衆、傍観者という四つの立場から説明している。この考え方は、いじめが集団全体の問題であることを理解するうえで重要だ。
いじめを支える四つの立場
加害者が直接攻撃を行う一方で、周囲の反応がその行動を強めたり、止める機会を失わせたりする。
それぞれの立場と心理的な関係を整理すると、次のようになる。
| 立場 | 主な心理・行動 | 集団への影響 | 必要な対応 |
|---|---|---|---|
| 加害者 | 優越感、支配欲、承認欲求、ストレスの発散 | 攻撃行動によって集団内の力関係を形成する | 行為の停止、責任の自覚、継続的な指導 |
| 被害者 | 恐怖、不安、孤立感、相談へのためらい | 集団内で発言や行動が制限されやすくなる | 安全確保、心理的支援、学習環境の改善 |
| 観衆 | 面白がる、笑う、はやしたてる、加害者に同調する | 加害者に成功体験を与え、いじめを強化する | 行為を容認しない態度と適切な介入 |
| 傍観者 | 恐怖、無関心、巻き込まれたくないという心理 | 沈黙によって加害行為が続きやすくなる | 安全な相談・通報方法と集団全体の意識改革 |
なぜ傍観者は見て見ぬふりをするのか
いじめを目撃しているにもかかわらず、何も行動できない理由の一つが、同調圧力だ。
クラス内で発言力の強い生徒が誰かをからかっているとき、周囲の生徒は笑わなければ自分が次の標的になるのではないかと不安を感じる場合がある。
また、自分一人が止めようとしても状況は変わらない、先生に相談すると告げ口だと思われる、関わらなければ自分には被害が及ばない、と考えることもある。
こうした心理は、社会心理学で扱われる同調行動や責任の分散と関連している。
周囲に人が多いほど、誰かが対応してくれるだろうと考え、個人が行動する責任を感じにくくなる場合がある。さらに、誰も止めない状況が続くと、いじめを問題視すること自体が集団内で難しくなる。
傍観者の沈黙が加害者への肯定に変わる
傍観者は、必ずしも加害者に賛同しているわけではない。むしろ、内心ではいじめを不快に感じていても、行動する勇気が出ないケースもある。
しかし、加害者から見ると、周囲が止めないことは、自分の行動が許容されているという誤った認識につながる。
そのため、いじめの予防では、子どもたちに直接対決を求めるのではなく、教師や相談窓口に知らせる、被害者を一人にしない、加害行為を笑わないなど、安全にできる行動を具体的に教えることが重要になる。
集団全体の雰囲気が変われば、いじめを続けることが難しくなる。加害者だけに注目するのではなく、周囲の行動を変えることが、いじめの仕組みを断ち切る鍵になる。
【SNSいじめの実態】匿名性・拡散力・24時間化が被害を深刻化させる
インターネットの普及によって、いじめは教室や学校内だけで完結しなくなった。
現在は、SNS、メッセージアプリ、動画共有サービス、オンラインゲームなど、さまざまな場所で嫌がらせが発生する可能性がある。
令和6年度のネットいじめは27,365件
文部科学省の令和6年度調査では、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」という態様のいじめは27,365件だった。
平成25年度の8,788件と比較すると、約3.1倍に増えている。ネット上の嫌がらせが継続的な課題になっていることが分かる。
この数字は調査上の特定の行為分類に基づくもので、SNSで起きるすべての問題を網羅した件数ではない。それでも、オンライン上のいじめが無視できない規模に達していることを示す重要なデータだ。
SNSいじめが深刻化しやすい五つの理由
第一に、情報の拡散が速いこと。一つの悪口や画像が複数のグループに共有されると、短時間で多くの人に知られる可能性がある。
第二に、匿名性によって攻撃への心理的抵抗が弱くなること。対面では言えない言葉でも、画面越しでは簡単に投稿してしまう場合がある。
第三に、学校の外でも被害が続くこと。帰宅後や休日にもメッセージや投稿を確認する必要が生じ、被害者が安心できる時間を失いやすい。
第四に、画像や動画が残り続けること。一度投稿された内容が保存・転載されると、元の投稿が削除されても被害が終わらないことがある。
第五に、周囲の参加者が増えやすいこと。コメントや引用投稿によって、最初の加害者とは別の人々が誹謗中傷に加わることもある。
2026年は暴力動画の投稿・拡散にも国が緊急対応
2026年1月30日、文部科学省は、児童生徒間の暴力行為などの動画がSNS上に投稿・拡散された問題を受け、全国の学校や教育委員会に緊急対応を通知した。
通知では、SNS上に動画が投稿されるまで学校が被害を把握できていなかった事案があることを踏まえ、アンケート調査、1人1台端末を活用した心の健康観察、スクールカウンセラーなどによる面談を通じて、見過ごされている被害がないか確認するよう求めている。
また、被害を受けた児童生徒の安全確保と心身のケア、加害行為への毅然とした指導、必要に応じた警察との連携、SNS上の動画や誹謗中傷への削除要請なども示された。
特に重要なのは、動画の拡散そのものが新たな人権侵害を生む可能性がある点だ。暴力行為を撮影・投稿した人だけでなく、動画を拡散したり、被害者を特定して攻撃したりする人も、二次被害を拡大させる側になり得る。
いじめの動画を見つけた場合、面白半分で保存・転載するのではなく、証拠を保全したうえで学校や関係機関に相談することが求められる。
【いじめの兆候と見分け方】子どもが発する小さなSOSを見逃さない
いじめは、必ずしも目立つ暴力や明確な言葉による攻撃として表れるわけではない。仲間外れ、無視、からかい、物を隠す行為など、周囲が気付きにくい形で続くことも多い。
被害を受けている子ども自身が、心配をかけたくない、仕返しが怖い、相談しても解決しないと思うなどの理由から、周囲に話さない場合もある。
家庭で注意したい代表的なサイン
- 学校に行きたがらない、登校前に腹痛や頭痛を訴える。
- 帰宅後に急に口数が減り、部屋にこもる時間が増える。
- 持ち物がなくなる、壊れる、衣服が汚れている。
- スマートフォンの通知を極端に気にする、または突然使わなくなる。
- 友人の話をしなくなる、休日に外出しなくなる。
- 睡眠や食欲に変化が生じる。
- 成績が急に低下する、授業や部活動への意欲を失う。
ただし、これらの変化だけでいじめと断定することはできない。重要なのは、複数の変化が重なっていないか、本人が何かを我慢している様子がないかを丁寧に確認することだ。
学校で確認したい兆候
学校では、休み時間にいつも一人でいる、特定の生徒が教室に入ると会話が止まる、班活動で特定の子どもだけが仲間に入れてもらえないなどの変化に注意したい。
また、授業中には問題が見られなくても、部活動、通学路、トイレ、昼休み、オンライン上など、教師の目が届きにくい場所で問題が起きていることもある。
そのため、担任一人の観察だけではなく、養護教諭、部活動顧問、スクールカウンセラー、学年担当などが情報を共有する必要がある。
子どもが相談してきたときに避けたい対応
子どもがいじめを打ち明けたとき、最初に必要なのは、話を否定せずに聞くことだ。
「あなたにも原因があるのでは」「そのくらい我慢しなさい」「相手と仲直りすればいい」といった言葉は、被害を受けた子どもに責任を感じさせ、相談する意欲を失わせる可能性がある。
まずは、話してくれたことを受け止め、いつ、どこで、誰から、何をされたのかを本人のペースに合わせて確認する。
無理に詳しい説明を求めたり、加害者とその場で対面させたりする必要はない。本人の安全を最優先に、学校や専門機関と連携することが重要だ。
【いじめの予防と具体的な対策】学校・家庭・社会が取り組むべきこと
いじめをなくすためには、加害者を注意するだけでは不十分だ。発生する前の環境づくり、早期発見、被害者の保護、加害者への指導、再発防止までを一つの仕組みとして考える必要がある。
いじめ防止対策推進法が定める学校と社会の責任
2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」は、いじめの防止、早期発見、発生後の対応について、国、自治体、学校、保護者などの責務を定めた法律だ。
同法第2条では、いじめを、一定の人的関係にある児童生徒から受ける心理的または物理的な影響を与える行為であり、対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているものと定義している。インターネットを通じて行われる行為も対象に含まれる。
この定義で重要なのは、殴る、蹴るといった身体的暴力だけでなく、悪口、無視、仲間外れ、SNSでの誹謗中傷なども対象になり得る点だ。
また、法律上の判断で、加害者にいじめの意図があったか、本人が冗談だと思っていたかだけを基準にすることはできない。
重大事態とは何か
いじめ防止対策推進法第28条では、次のような場合を重大事態として、学校の設置者または学校が事実関係を明らかにするための調査を行うことを定めている。
- いじめによって生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある場合。
- いじめによって相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合。
欠席については年間30日が一つの目安とされているが、連続して欠席している場合などは、30日に達するまで対応を待つべきではない。
重大事態が疑われる場合には、学校や設置者が調査組織を設け、事実関係を明らかにするための調査を行うことが求められる。
学校が実施すべき五つの対策
1. 定期的なアンケートと個別面談
児童生徒が安心して回答できるアンケートを実施し、表面化していないトラブルを把握する。回答しにくい子どもには、個別面談やオンラインでの相談方法も用意する。
2. 学校いじめ対策組織による情報共有
いじめに関する情報を担任一人で抱え込まず、学校いじめ対策組織に報告する。些細なトラブルでも記録を残し、複数の教職員で対応を検討する。
3. 被害者の安全確保
被害を受けた児童生徒の安全を最優先にし、必要に応じて座席、教室、活動場所、登下校の環境などを調整する。被害者に一方的な我慢や転校を求めないことも重要だ。
4. 加害者への継続的な指導と支援
行為の問題点と相手に与えた影響を理解させ、再発を防ぐための指導を行う。加害者自身が抱えるストレスや人間関係の問題についても、スクールカウンセラーなどと連携して支援する。
5. 学校外の専門機関との連携
重大な被害や犯罪行為に相当する事案では、学校だけで抱え込まず、教育委員会、警察、児童相談所、医療機関、法務局などと連携する。
家庭でできるいじめ予防
家庭で最も大切なのは、子どもが安心して本音を話せる関係を築くことだ。
学校で何があったかを毎日細かく問い詰めるよりも、普段の会話を通して、友人関係や学校生活について自然に話せる時間をつくる方がよい。
また、子どもが誰かの悪口を言ったり、特定の人をからかったりした場合には、その行為が相手にどのような影響を与えるのかを具体的に考えさせることが重要だ。
保護者自身も、他人の失敗や外見を笑いものにしないなど、日常生活で他者を尊重する姿勢を示す必要がある。
2026年の新しい課題は学校の組織的な備え
文部科学省は2026年3月19日、いじめ重大事態の調査に関するガイドラインのチェックリストを活用した、学校や設置者の平時からの備えに関する点検結果を公表した。
その結果、学校側では、いじめ防止基本方針を入学時や年度初めに説明すること、日常的な記録を適切に管理すること、情報を保存する統一的な仕組みを整えること、犯罪行為に相当するいじめについて警察に相談・通報することを保護者に周知することなど、四つの項目で実施できていると回答した割合が90%前後にとどまった。
学校の設置者側でも、保護者との情報共有、地域の関係機関との連携、重大事態発生時の対応手順の明確化などについて、備えができていると回答した割合が90%を下回った。
この結果は、いじめ防止基本方針を作成するだけでは十分ではないことを示している。実際に問題が発生した際、誰が情報を受け取り、誰に報告し、どのような調査を行い、被害者をどう守るのか。その手順が学校全体で共有されていなければ、早期対応は難しい。
いじめ対策では、制度の存在と制度が実際に機能していることを区別して考える必要がある。
いじめを防ぐために傍観者ができること
子どもたちに加害者と直接対決することを求める必要はない。安全を確保しながら、できる行動を選ぶことが重要だ。
- いじめを見ても笑ったり、面白がったりしない。
- 被害を受けている友人に声をかけ、一人にしない。
- 先生や保護者、スクールカウンセラーに情報を伝える。
- SNSの悪口や動画を拡散しない。
- 自分自身が危険を感じる場合は、無理に介入せず大人に助けを求める。
いじめを止める責任は、子ども一人に押し付けるものではない。周囲の大人が相談しやすい環境を整え、声を上げた子どもを守ることが前提になる。
【いじめなぜ起こる】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:いじめはなぜ起こるのですか?
A1:承認欲求、劣等感、支配欲、ストレス、他人への共感性の不足など、複数の心理的要因が関係するためです。さらに、集団内の序列や同調圧力、傍観者の沈黙、学校の対応不足などが重なることで、いじめが発生・継続しやすくなります。
Q2:いじめをする人には共通した心理的特徴がありますか?
A2:他人より優位に立ちたい、周囲から注目されたい、不満を他人にぶつけたいといった心理が見られる場合があります。ただし、加害者全員に共通する性格や家庭環境があるわけではありません。個々の背景を把握しながら、行為への責任を明確にする必要があります。
Q3:傍観者がいじめを止めないのはなぜですか?
A3:自分が次の標的になる恐怖、集団から孤立する不安、関わりたくないという心理、誰かが対応するだろうという責任の分散などが理由として考えられます。直接注意することだけが解決策ではなく、先生や保護者に知らせることも重要な行動です。
Q4:いじめの認知件数が増えているのは、実際にいじめが増えたからですか?
A4:認知件数の増加だけで実際の発生数の増加を断定することはできません。文部科学省は、いじめの定義への理解、アンケートや教育相談の充実、ICTを活用した早期発見、ネット上のいじめの積極的な認知なども背景として挙げています。
Q5:SNSでの悪口や仲間外れも法律上のいじめになりますか?
A5:なり得ます。いじめ防止対策推進法第2条は、インターネットを通じた行為も対象に含めています。SNSでの誹謗中傷、グループからの排除、画像の無断拡散なども、被害者が心身の苦痛を感じている場合には、いじめとして認知される可能性があります。
Q6:いじめを受けている子どもには、どのように接すればよいですか?
A6:まず本人の話を否定せずに聞き、安全を確保することが大切です。本人の意思を尊重しながら、いつ、どこで、何が起きたのかを記録し、学校の管理職やいじめ対策組織に相談してください。深刻な被害や犯罪行為が疑われる場合は、警察などの関係機関への相談も検討します。
まとめ:いじめが起こる仕組みを理解し、集団全体で防ぐことが重要
いじめはなぜ起こるのか。その答えは、加害者の性格だけにあるわけではない。承認欲求や劣等感、支配欲などの心理に加え、集団内の力関係、同調圧力、傍観者の沈黙、学校環境、SNSの拡散力などが複雑に絡み合っている。
文部科学省の令和6年度調査では、いじめの認知件数が769,022件、重大事態が修正版で1,404件となった。特に重大事態の34.9%が、それ以前にはいじめとして認知されていなかったという事実は、早期発見と組織的対応の必要性を浮き彫りにしている。
2026年には、SNS上の暴力動画の投稿・拡散を受けた緊急通知や、重大事態を防ぐための平時の備えに関する点検も進められた。いじめ対策は、問題が発生してから加害者を指導するだけではなく、発生しにくい学校環境をつくる段階から始めなければならない。
いじめをなくすために必要なのは、被害者に我慢を求めることでも、加害者だけを排除することでもない。被害を受けた子どもを守り、加害行為には責任を問うと同時に、周囲の子どもたちがいじめを容認しない集団をつくることだ。
誰かが傷ついているときに、その声を見逃さない。小さな違和感を放置せず、学校・家庭・地域が連携して対応する。その積み重ねこそが、いじめの発生と深刻化を防ぐための現実的な道筋になる。
主な根拠資料: 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」、いじめ防止対策推進法、法務省人権啓発資料、文部科学省2026年1月30日付通知・3月19日付通知。 (出典: いじめ なぜ 起こる(Yahoo!ニュース))