海馬とは何か?記憶と空間認識を支える脳の仕組み・構造と萎縮、認知症との関係を徹底解説
海馬とは、脳の側頭葉内側に左右一対で存在する、記憶の形成や空間認識に深く関わる神経組織です。新しい出来事を覚えたり、以前訪れた場所を思い出したりするとき、海馬を含む脳のネットワークが重要な働きをしています。形がタツノオトシゴに似ていることから、ギリシャ語でタツノオトシゴを意味する「Hippocampus」に由来する名前が付けられました。
海馬の働きは、単純に情報を保存することだけではありません。歯状回、CA1・CA3領域、海馬台、嗅内皮質などが連携し、経験した出来事の情報を整理して、記憶の形成や想起、空間の把握を支えています。2026年には、海馬と大脳皮質の情報交換や、海馬台による時間・空間情報の処理に関する研究も進んでいます。この記事では、海馬の位置や構造から、記憶の仕組み、萎縮と認知症との関係までを解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:海馬は側頭葉の内側にある左右一対の脳領域で、新しいエピソード記憶や空間認識に重要な役割を果たす。
- 要点2:歯状回、CA1、CA3、海馬台などが連携し、情報の識別・関連付け・記憶の形成を支えている。
- 要点3:海馬の萎縮はアルツハイマー病などで認められるが、MRIの萎縮だけで認知症を確定することはできない。
【基礎知識】海馬とは?脳のどこにあり、どのような役割を担うのか
海馬は、大脳の側頭葉の内側、左右それぞれの半球に存在する細長く湾曲した組織です。脳の表面からは見えにくい位置にあり、海馬傍回や嗅内皮質などの神経組織と密接につながっています。
大きさには個人差がありますが、成人の海馬は一般に数センチ程度の長さを持ちます。断面では複雑な層構造を形成しており、内部には複数の神経細胞群と神経回路が存在します。
海馬の名前の由来と位置
海馬という名称は、その形状が海中を泳ぐタツノオトシゴに似ていることに由来します。英語ではHippocampusと呼ばれ、神経科学や医学の分野でも広く使われている名称です。
位置を理解するには、脳を横から見たときの側頭葉をイメージすると分かりやすいでしょう。側頭葉は耳の上方から後方に広がる脳の領域で、その内側に海馬があります。
海馬は左右に一つずつ存在します。両側の海馬は、それぞれの大脳半球や周囲の神経ネットワークと連携しながら情報を処理しています。
海馬が担う主な3つの機能
海馬の代表的な機能は、次の3つです。
- 記憶の形成:新しく経験した出来事や情報を結び付け、後から思い出せる記憶の形成を支える。
- 空間認識:自分がいる場所や周囲の位置関係、移動経路などを把握する。
- 記憶の想起と統合:過去の経験を手掛かりに情報を呼び出し、新しい経験や知識と関連付ける。
海馬は、脳に入ってきた情報を単純に保管する倉庫ではありません。視覚、聴覚、感情、場所、時間など、さまざまな情報を関連付けることで、経験を一つのまとまりとして記憶できるようにします。
【記憶の仕組み】海馬はエピソード記憶と空間認識をどう支えるのか
海馬を理解するうえで欠かせないのが、エピソード記憶と空間認識です。どちらも、複数の情報を結び付けて、経験を意味のあるまとまりとして扱う能力に関係しています。
エピソード記憶とは?「いつ・どこで・何をしたか」を覚える仕組み
エピソード記憶とは、自分が実際に経験した出来事についての記憶です。
例えば、昨日友人とレストランで食事をした経験を思い出すときには、次のような情報が組み合わさっています。
- いつ:昨日の夕方
- どこで:駅前のレストラン
- 誰と:友人と一緒に
- 何をしたか:食事をしながら会話した
- どのような状況だったか:店内の雰囲気や会話の内容
海馬は、こうした異なる種類の情報を関連付け、出来事として記憶する働きを支えています。
そのため、海馬が損傷すると、新しい出来事を覚えることが難しくなる場合があります。過去の知識や言葉の意味を理解できても、直前に経験した出来事を後から思い出せないという症状が現れることもあります。
空間認識と脳内の認知地図
海馬は、場所や方向、周囲の環境を把握する空間認識にも関係しています。
例えば、初めて訪れた建物で目的の部屋を探したり、いつもの通勤経路を思い出したりするとき、脳は周囲の目印や自分の位置、移動した方向などを組み合わせて判断します。
このような空間情報の処理には、海馬に存在する場所細胞(プレイスセル)などが関係しています。場所細胞は、動物が特定の場所にいるときに活動しやすい神経細胞です。また、周辺の嗅内皮質には、空間を規則的なパターンで表現する格子細胞(グリッドセル)が存在します。
これらの神経活動が連携することで、脳内に環境や位置関係を表す認知地図が形成されると考えられています。
2025年に『Annual Review of Neuroscience』で公表されたジョン・オキーフ氏のレビューでは、海馬の場所細胞が方向情報や目的地との関係を含む柔軟なナビゲーションに関与する仕組みが論じられています。
海馬の役割は、単に道順を覚えることではありません。場所と出来事を結び付け、状況が変わったときにも過去の経験を利用できるようにすることが重要です。
海馬と睡眠による記憶の定着
睡眠も海馬の記憶機能と深く関係しています。
学習中に活動した神経細胞のパターンは、休息中や睡眠中にも再活性化することがあります。特に、海馬で観察される鋭波リップルと呼ばれる神経活動は、経験に関係する情報の再活性化や大脳皮質との情報交換に関与しています。
2026年8月5日に学術誌『The Neuroscientist』でオンライン公開されたCan Liu氏らのレビュー「Hippocampal-Cortical Circuits and Memory」では、海馬、嗅内皮質、大脳新皮質の間で起こる双方向の情報交換が整理されています。
この研究レビューが示す重要な点は、記憶が海馬から大脳皮質へ一方向に移動するだけではないことです。記憶の形成、固定化、想起の各段階で、複数の脳領域が継続的に情報をやり取りしていると考えられています。
【内部構造】海馬体を構成する歯状回・CA1・CA3・海馬台の関係
海馬の働きを詳しく理解するには、内部の構造を知る必要があります。
海馬を含む領域は、広い意味で海馬体や海馬形成と呼ばれます。解剖学的な用語の範囲には違いがありますが、一般的には海馬本体、歯状回、海馬台などが主要な構成要素です。
さらに、その周囲には嗅内皮質など、海馬と大脳皮質を結ぶ重要な領域があります。
海馬の主要な構成要素と役割
| 領域・組織 | 主な役割 | 他の領域との関係 |
|---|---|---|
| 歯状回 | 似た経験や情報を区別するパターン分離 | 嗅内皮質から情報を受け取り、CA3へ伝える |
| CA1領域 | 異なる情報の統合や時間的な情報処理 | CA3などから入力を受け、海馬台などへ出力する |
| CA3領域 | 情報の関連付けや記憶の補完 | 歯状回から入力を受け、CA1へ情報を伝える |
| 海馬台 | 情報の統合と他の脳領域への出力 | 海馬と嗅内皮質、大脳皮質などを結ぶ |
| 嗅内皮質 | 感覚情報や空間情報の中継・処理 | 大脳皮質と海馬の間で双方向に情報を伝える |
| 扁桃体 | 恐怖や喜びなどの情動処理 | 海馬と連携して感情を伴う記憶に関わる |
歯状回:似た情報を区別する働き
歯状回は、海馬の入り口付近に位置する重要な領域です。嗅内皮質から情報を受け取り、主にCA3領域へ伝達します。
代表的な機能の一つが、パターン分離(Pattern Separation)です。
例えば、毎日利用する駅の改札が少し変わった場合や、似たような場所を別々に訪れた場合を考えてみましょう。歯状回は、共通点の多い情報を異なる経験として区別する処理に関与しています。
この機能があることで、似た出来事が混同されにくくなり、それぞれの経験を個別に記憶しやすくなると考えられています。
CA3領域:記憶の関連付けと補完
CA3領域は、海馬の神経回路の中でも情報の関連付けに重要な役割を持つ部分です。
CA3の神経細胞は、同じ領域内の神経細胞とも多くの結合を形成しています。この特徴から、部分的な情報を手掛かりに過去の記憶全体を呼び起こすパターン補完(Pattern Completion)に関係すると考えられています。
例えば、昔住んでいた家の玄関を思い出しただけで、部屋の様子や当時の生活風景まで思い浮かぶことがあります。こうした記憶の再構成には、CA3を含む海馬の神経回路が関わっています。
CA1領域:情報の統合と出力
CA1領域は、CA3からの情報や嗅内皮質からの直接入力を受け取る場所です。
異なる経路から届く情報を統合し、海馬台などへ伝達する役割を担います。記憶の時間的な順序や出来事の文脈を処理する仕組みにも関係しています。
CA1は、アルツハイマー病などの神経変性疾患や低酸素状態による脳障害の研究でも注目される領域です。
海馬台:単なる中継地点ではない情報処理の拠点
海馬台は、海馬の出力に関わる領域として知られてきました。しかし、現在では単に情報を送り出すだけでなく、空間情報や時間情報を組み合わせる能動的な情報処理にも関与することが研究されています。
2026年9月11日に学術誌『Hippocampus』で公開されたHye Ja Kang氏らのレビュー「The Human Subiculum and Its Role in Spatiotemporal Memory and Mental Imagery」では、人間の海馬台が空間・時間情報の処理や心的イメージの形成に関係する可能性が論じられています。
ただし、こうした機能の全容や、人間の高度な認知機能への具体的な寄与については、引き続き研究が必要です。
嗅内皮質:海馬と大脳皮質を結ぶ重要な領域
嗅内皮質は、海馬の近くに位置する大脳皮質の一部です。大脳皮質から集まった情報を海馬へ伝え、海馬から戻ってくる情報を受け取る重要な役割を担っています。
海馬と嗅内皮質の連携は、記憶だけでなく空間認識やナビゲーションにも欠かせません。嗅内皮質に存在する格子細胞などは、自分の位置や周囲の空間を把握するための神経活動に関係しています。
海馬の機能は、内部の各領域だけで完結するものではなく、周辺の脳組織とのネットワークによって成り立っています。
【記憶の違い】短期記憶と長期記憶、海馬と扁桃体はどう違う?
海馬について調べると、「短期記憶を長期記憶に変える場所」という説明を目にすることがあります。この説明は大まかな理解には役立ちますが、実際の記憶の仕組みはもう少し複雑です。
短期記憶と長期記憶の違い
短期記憶とは、情報を短い時間だけ保持する記憶です。例えば、電話番号を聞いて、メモを取るまで覚えておくことが該当します。
一方、長期記憶は、長期間にわたって保持される情報です。学校で学んだ知識、過去の旅行の思い出、自転車の乗り方などが含まれます。
記憶は保持時間だけでなく、内容や使い方によっても分類されます。
- エピソード記憶:自分が経験した出来事に関する記憶。
- 意味記憶:言葉の意味や一般的な知識に関する記憶。
- 手続き記憶:自転車の運転や楽器の演奏など、技能に関する記憶。
- 作業記憶:情報を一時的に保持しながら、計算や判断などに利用する仕組み。
海馬は、特に新しいエピソード記憶や意味記憶の形成に重要です。一方、自転車の乗り方のような手続き記憶には、大脳基底核や小脳など、別の神経回路が重要な役割を果たします。
海馬は短期記憶から長期記憶へ情報を移すだけなのか
記憶の固定化では、海馬と大脳新皮質が協力します。新しい経験の記憶は海馬に強く依存することがありますが、時間の経過とともに大脳皮質のネットワークにも記憶が定着していきます。
ただし、すべての記憶が同じ速度で固定化されるわけではありません。また、記憶を思い出すときにも海馬が関与する場合があり、海馬が長期記憶から完全に離れるとは限りません。
さらに、作業記憶は前頭前野などのネットワークとも密接に関係しています。単純な情報を短時間保持する働きを、海馬だけで説明することはできません。複数の情報や場所の関係を結び付けるような課題では、短い保持時間であっても海馬が関与する可能性があります。
海馬と扁桃体の違い
海馬と扁桃体は、どちらも側頭葉内側部に近い領域に位置し、記憶や感情に関わっています。しかし、主な役割は異なります。
海馬は出来事の文脈や状況を記憶する働き、扁桃体は出来事に伴う感情的な意味や重要性を処理する働きに深く関係しています。
例えば、怖い経験をしたとき、海馬は「どこで、いつ、何が起きたのか」という状況の記憶に関わり、扁桃体は恐怖や危険に対する反応に関わります。
両者は独立して働くわけではありません。扁桃体の活動は感情を伴う記憶の形成や固定化に影響し、海馬は出来事の文脈を通じて感情反応に影響します。
【健康と認知症】海馬の萎縮が起こる原因とアルツハイマー病との関係
海馬の萎縮とは、神経細胞や神経組織の変化などによって、海馬の体積が小さくなる状態です。MRIなどの画像検査で評価され、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の診療や研究で重要な指標になっています。
海馬が萎縮する主な原因
海馬の体積は、加齢や健康状態、病気などの影響を受けます。代表的な要因は次のとおりです。
- 加齢:年齢を重ねることで、脳の体積や神経機能に変化が生じる。
- アルツハイマー病:神経変性が進み、海馬やその周辺領域の萎縮が目立つことがある。
- 側頭葉てんかん:特に内側側頭葉てんかんでは、海馬硬化などの構造変化が認められる場合がある。
- 低酸素性脳障害:酸素不足によって、酸素に敏感な海馬の神経細胞が損傷することがある。
- その他の神経疾患:脳炎など、海馬や周辺領域に影響する病気でも変化が生じる場合がある。
海馬の萎縮は必ずしも認知症を意味するわけではありません。年齢や個人差、ほかの病気なども考慮する必要があります。
アルツハイマー病と海馬萎縮の関係
アルツハイマー病は、認知症の原因となる代表的な神経変性疾患です。脳内にアミロイドβや異常なタウタンパク質が蓄積し、神経細胞や神経ネットワークに障害が生じます。
初期の段階では、嗅内皮質や海馬など、記憶に関係する側頭葉内側部に変化が現れることがあります。
そのため、アルツハイマー病では、新しい出来事を覚えにくくなったり、同じ質問を繰り返したり、最近の会話や約束を忘れたりする症状が目立つ場合があります。
国立長寿医療研究センターの認知症に関する解説でも、アルツハイマー型認知症ではMRIで海馬の萎縮が目立つことが多い一方、個々の症例で画像だけから病気を鑑別することは難しいと説明されています。
海馬の萎縮はMRIで分かる?
海馬の状態を調べる代表的な検査がMRIです。MRIでは、海馬の形状や体積、周辺領域の萎縮などを確認できます。
画像解析ソフトを利用して、海馬や海馬傍回などの体積を統計的に評価する方法もあります。日本の医療機関でも、アルツハイマー病の診療において海馬周辺の萎縮を評価する検査が利用されています。
ただし、MRIで海馬の萎縮が見つかったからといって、直ちにアルツハイマー病と診断されるわけではありません。
米国国立老化研究所(National Institute on Aging)も、MRIで確認できる脳の萎縮はアルツハイマー病などの診断を補助する情報であり、特定の病気を単独で確定するものではないと説明しています。
実際の診断では、本人や家族からの病歴の聞き取り、認知機能検査、血液検査、MRI、必要に応じたPET検査や脳脊髄液検査などを組み合わせて判断します。
海馬の萎縮と認知症は同じではない
ここで注意したいのが、海馬の萎縮と認知症を同じ意味で捉えないことです。
認知症は、さまざまな原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障が生じる状態を指します。アルツハイマー病だけでなく、血管性認知症やレビー小体型認知症など、異なる原因の病気があります。
また、海馬の萎縮の程度と認知機能の低下が必ずしも一致するとは限りません。画像上の変化だけでなく、本人がどのような症状を経験しているか、生活にどの程度影響があるかを総合的に評価することが大切です。
物忘れが続いて日常生活に影響している場合には、もの忘れ外来、神経内科、老年内科などの医療機関に相談することが勧められます。急激な認知機能の変化は、感染症や薬剤の影響、脳血管障害など別の原因でも起こり得るため、早めの医療機関への相談が必要です。
【2026年最新研究】海馬の研究はどこまで進んでいる?誤解と今後の展望
2026年の海馬研究では、個々の神経細胞の働きだけでなく、海馬と大脳皮質を含む広範囲の神経ネットワークに注目が集まっています。
2026年の研究で注目される海馬と大脳皮質の連携
2026年8月に『The Neuroscientist』で発表されたCan Liu氏、Ryan E. Harvey氏、Antonio Fernandez-Ruiz氏らのレビューでは、海馬と嗅内皮質、大脳新皮質の間で起こる双方向の情報交換が整理されました。
特に注目されるのが、睡眠や休息中の鋭波リップルです。これは、海馬で過去の経験に関連する神経活動が再活性化する現象と関係しています。
こうした活動は、大脳皮質との情報交換を通じて記憶の固定化を支えると考えられています。記憶は一度海馬に保存されて終わるのではなく、複数の脳領域が繰り返し情報をやり取りすることで形成・更新されるという理解が深まっています。
2026年の海馬台研究が示す新しい可能性
2026年9月に『Hippocampus』で公表された海馬台に関するレビューも注目されます。
従来、海馬台は海馬の情報を外部に送り出す出力領域として説明されることが多くありました。しかし、研究では、海馬台そのものが空間・時間情報を統合する情報処理の拠点として働く可能性が論じられています。
研究者たちは、海馬台の神経回路や大脳皮質との結び付きが、空間認識だけでなく、頭の中で場面を想像したり、過去の出来事を再構成したりする能力にも関係する可能性を検討しています。
ただし、動物実験で得られた知見と人間の認知機能との対応には、まだ解明すべき点が残されています。
海馬に関するよくある誤解
海馬については、専門的な研究内容が簡略化されることで、実際の機能とは異なる理解が広がることがあります。
- 誤解1:海馬は記憶をすべて保存する場所。
実際には、長期記憶は大脳皮質などを含む広範囲の神経ネットワークに分散して保持されます。 - 誤解2:海馬が萎縮すると必ず認知症になる。
加齢や個人差、ほかの病気も関係するため、萎縮だけでは認知症を確定できません。 - 誤解3:海馬と扁桃体は同じ働きをする。
海馬は出来事の文脈や記憶、扁桃体は感情的な意味や情動反応に深く関係しています。 - 誤解4:海馬は短期記憶だけを長期記憶に変える。
実際には、記憶の形成・固定化・想起において、大脳皮質などとの双方向の連携が重要です。
日常生活で海馬の健康を考えるためのポイント
海馬の健康を考えるうえでは、特定の脳トレだけに頼るのではなく、脳全体の健康を保つ生活習慣が大切です。
- 十分な睡眠:睡眠時間と睡眠の質を確保し、記憶の固定化を支える。
- 適度な運動:ウォーキングなどの有酸素運動を継続し、全身の血流や代謝を保つ。
- 生活習慣病の管理:高血圧や糖尿病など、脳血管や認知機能に影響する危険因子を管理する。
- 知的活動:読書、学習、会話、新しい経験などを通じて多様な認知活動を行う。
- 社会的交流:家族や友人との会話や地域活動など、人との関わりを保つ。
これらの習慣が海馬の萎縮を確実に防いだり、アルツハイマー病を完全に予防したりするわけではありません。しかし、脳や身体の健康を総合的に維持するうえで役立つ取り組みです。
【プロの結論】海馬を理解するうえで押さえたい本質的なポイント
海馬を理解するために最も重要なのは、記憶を単独で保管する場所ではなく、経験を整理し、複数の情報を結び付ける神経ネットワークの中心的な構成要素として捉えることです。
歯状回は似た情報を区別し、CA3は情報の関連付けや補完に関わり、CA1は異なる経路からの情報を統合します。さらに、海馬台や嗅内皮質が周辺の脳領域との情報交換を支えています。
この仕組みがあるからこそ、人間は単に物事を覚えるだけでなく、過去の経験を手掛かりに状況を判断し、場所を認識し、将来の行動を考えることができます。
また、海馬の萎縮を認知症と直結させないことも重要です。MRIは有用な検査ですが、画像所見だけでは診断できません。認知機能の変化や生活への影響、他の検査結果を合わせて評価する必要があります。
2026年の研究では、海馬台の情報処理機能や、睡眠中の海馬と大脳皮質の相互作用など、従来の説明をさらに広げる知見が積み重なっています。海馬の研究は、記憶の仕組みを解き明かすだけでなく、認知症の早期発見や治療法の研究にもつながる重要な分野です。
【海馬の基礎知識】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:海馬とは脳のどこにありますか?
A1:海馬は左右の大脳半球に一つずつあり、側頭葉の内側に位置しています。脳の表面からは見えにくい場所にあり、記憶や空間認識に関わる重要な領域です。
Q2:海馬はどのような記憶を担当していますか?
A2:特に、新しく経験した出来事を覚えるエピソード記憶や、場所・位置関係を把握する空間記憶に重要です。記憶の形成や想起には、大脳皮質などのほかの領域との連携も必要です。
Q3:海馬が萎縮するとどうなりますか?
A3:海馬の萎縮が進むと、新しい出来事を覚えにくくなるなど、記憶機能に影響が出る場合があります。ただし、萎縮の程度や原因には個人差があり、画像検査だけで認知症を判断することはできません。
Q4:海馬と扁桃体の違いは何ですか?
A4:海馬は出来事の状況や文脈を記憶する働きに関わり、扁桃体は恐怖や喜びなどの感情的な意味を処理する働きに関わります。感情を伴う記憶では、両者が連携して機能します。
Q5:海馬は睡眠と関係がありますか?
A5:はい。睡眠中には海馬で過去の経験に関係する神経活動が再活性化し、大脳皮質との情報交換が行われます。こうした活動は、記憶の固定化や長期的な保持に関係すると考えられています。
Q6:海馬を鍛えることはできますか?
A6:運動や学習、十分な睡眠、社会的交流などは脳の健康を維持するうえで役立ちます。ただし、特定のトレーニングによって海馬の萎縮や認知症を確実に防げるというわけではありません。継続的な健康管理が大切です。
まとめ:海馬の働きと萎縮を正しく理解し、脳の健康を守る
海馬とは、脳の側頭葉内側に存在し、エピソード記憶や空間認識、記憶の形成と想起に重要な役割を果たす領域です。
その内部では、歯状回、CA1・CA3領域、海馬台などが連携し、嗅内皮質や大脳皮質との情報交換を通じて複雑な記憶処理を行っています。さらに、扁桃体などの領域と協力することで、感情を伴う経験の記憶にも関わっています。
海馬の萎縮はアルツハイマー病などで認められる重要な所見ですが、加齢や個人差なども影響するため、萎縮だけで認知症と判断することはできません。気になる物忘れが続く場合は、早めに医療機関で相談することが大切です。
2026年の最新研究では、海馬を中心とした脳内ネットワークの双方向の情報交換や、海馬台の高度な情報処理機能など、新しい知見が明らかになりつつあります。海馬の仕組みを知ることは、記憶の不思議を理解するだけでなく、将来の認知症研究や脳の健康管理を考えるうえでも重要な手掛かりになります。
主な学術・公的根拠資料(記事外)
- 2026年の海馬・大脳皮質ネットワーク研究:
- 2026年の海馬台と時間・空間記憶の研究:
- 空間認識と海馬の認知地図に関する2025年レビュー:
- 国立長寿医療研究センターの認知症・画像診断解説:
- 米国国立老化研究所の認知症診断・MRI解説:
- 海馬の加齢変化とアルツハイマー病に関する2024年システマティックレビュー:
- 海馬と扁桃体の情動記憶に関する研究: (出典: 海馬 と は(Yahoo!ニュース))