【人口17,859人】多可町はどんな町?3つの地域と人口推移から実態を読み解く
多可町は、兵庫県の東播磨地域北部に位置する町で、2005年11月1日に旧中町、旧加美町、旧八千代町の3町が合併して誕生した。
総面積は185.19平方キロメートル。神戸市まで直線距離で約45km、大阪市まで約70kmという位置にあり、中国山地の山々と川、田園に囲まれている。
2026年10月の人口は17,859人
2026年10月1日現在・多可町公式統計
男性
女性
世帯数
7,715世帯
人口密度
96.43人/km²
出典:多可町「人口・世帯」2026年10月1日現在
人口の推移を見ると、減少傾向は明確だ。
| 時点 | 人口 |
|---|---|
| 2014年10月1日 | 22,494人 |
| 2024年10月1日 | 18,668人 |
| 2025年10月1日 | 18,302人 |
| 2026年10月1日 | 17,859人 |
2014年10月から2026年10月までの12年間で、人口は4,635人、約20.6%減少した。
2025年10月からの1年間でも443人減っている。人口減少は一時的な変動ではなく、地域社会の維持に関わる継続的な課題だ。
町の介護保険事業計画に掲載された2026年の人口構成推計では、高齢化率は40.8%とされている。これは計画策定時の推計値だが、少子高齢化への対応が町の大きな政策課題になっていることを示す。
加美区・中区・八千代区の違い
多可町を理解するうえで欠かせないのが、3つの区の特徴だ。
加美区(かみく)
山間部の自然や農村風景が魅力。岩座神の棚田、杉原紙研究所、道の駅 杉原紙の里・多可などがある。
中区(なかく)
町役場が置かれる行政の中心地域。山田穂の発見地とされる東安田や余暇村公園などがある。
八千代区(やちよく)
野間川沿いに集落や田園が広がる地域。敬老の日の発祥に関係する野間谷村の歴史を受け継いでいる。
3つの地域は、それぞれ異なる歴史と景観を持つ。観光で訪れる場合も、移住を検討する場合も、町全体をひとまとめに考えず、区ごとの特徴を確認することが大切だ。
【全国に誇る3つの発祥】山田錦・杉原紙・敬老の日の歴史
多可町の大きな特徴は、全国的に知られる3つの文化的な発祥に関わっていることだ。
単に古い歴史があるというだけではない。農業、手工芸、地域福祉という異なる分野で、日本の文化や生活に影響を与えてきた。
1.山田錦の発祥の地
多可町は、その山田錦の母方の品種である「山田穂」が生まれた町として知られる。
多可町の公式紹介によれば、山田穂を発見した人物は、中区東安田の豪農・山田勢三郎とされている。
山田穂と「短稈渡船」という品種を交配して誕生したのが山田錦だ。
ここで押さえておきたいのは、多可町が山田錦の母方品種の発祥地であるという点。現在の山田錦が誕生するまでには、品種改良と地域農業の積み重ねがあった。
さらに、多可町では集落や営農組合と酒蔵が結びつく「村米制度」が続いている。
村米制度とは、特定の酒蔵と地域の生産者が関係を築き、酒米の生産と調達を支える仕組みだ。
2025年1月24日、多可町は「兵庫の酒米『山田錦』生産システム」が日本農業遺産に認定されたことを公表した。
これは米の品質だけでなく、農家と酒蔵の長年の協力関係も評価されたものだ。
2.1000年以上の歴史を持つ杉原紙
杉原紙は、多可町北部の杉原谷に由来するとされる伝統的な手すき和紙だ。
その歴史は古く、奈良時代にまでさかのぼる。鎌倉時代には武家社会の公用紙や贈答品として使われ、室町時代以降は一般にも広がった。
江戸時代には浮世絵や版画などにも利用され、全国的に知られる和紙となった。
しかし、明治時代以降、機械すきの紙や洋紙が普及すると、手すき和紙の需要は減少する。杉原紙も大正時代には一度途絶えた。
その技術を復活させたのが地域の人々だった。
- 昭和初期:杉原紙の歴史的価値について研究が進む。
- 昭和45年:杉原紙の復元が実現。
- 昭和47年:町営の杉原紙研究所が設立される。
- 現在:製造技術の保存、継承、紙すき体験などを実施。
多可町の杉原紙研究所では、伝統的な紙すきの工程を学ぶことができる。杉原紙を実際に使った製品に触れられるのも魅力だ。
3.敬老の日の発祥の地
多可町が誇る3つ目の発祥は、国民の祝日「敬老の日」だ。
その始まりは、現在の八千代区にあたる旧野間谷村にある。
1947年(昭和22年)、当時の村長だった門脇政夫が、村主催の敬老会を開催した。
戦後間もない時代、高齢者への敬意を表し、長年培ってきた知識や経験を次の世代へ伝える機会を設けることが目的だった。
敬老会は農作業の落ち着く9月15日に開催された。高齢者を村の公会堂に招き、食事や播州歌舞伎でもてなしたと伝えられている。
その後、門脇村長は9月15日を「としよりの日」とすることを提唱し、県や国にも働きかけた。
1966年には国民の祝日として「敬老の日」が制定され、2003年からはハッピーマンデー制度により9月の第3月曜日となった。
多可町の歴史・産業を結びつける関係一覧
それぞれの歴史を並べてみると、多可町が単なる農村ではなく、地域の資源を全国的な文化へとつなげてきたことが分かる。
この関係性から見えてくるのは、農業、手工芸、地域福祉、食文化がそれぞれ独立して存在しているのではなく、地域の歴史の中でつながっているということだ。
【観光スポットおすすめ】岩座神の棚田から道の駅まで見どころを紹介
多可町の観光は、大規模な商業施設を巡るスタイルではない。山間の風景、歴史的な景観、地元の食材、伝統文化をじっくり楽しむ旅が中心となる。
おすすめのスポットを紹介する。
岩座神の棚田|日本の原風景が残る山里
加美区にある
「いさりがみ」と読み、石垣で支えられた棚田と集落の住宅が調和した美しい風景が広がる。
棚田の石垣は鎌倉時代につくられたものと伝えられ、「日本の棚田百選」や「つなぐ棚田遺産」に選ばれている。
特徴は、単に田んぼが階段状に並んでいるだけではないこと。山の斜面に合わせた石垣の積み方や、草刈りのために設けられた踏み石など、先人の農業技術が現在も景観に残っている。
1997年には、景観保全と都市住民との交流を目的に、県内初の棚田オーナー制度が導入された。
道の駅 杉原紙の里・多可|食と伝統文化を楽しむ拠点
加美区鳥羽にある
主な魅力は次のとおり。
- 地元産の農産物や特産品の販売
- 播州百日どりを使った料理
- 地元米を使用した食事や釜飯
- 杉原紙関連商品の販売
- 隣接する杉原紙研究所での紙すき体験
レストラン車留満では、播州百日どりを使用した定食が人気メニューとして紹介されている。
和紙を見て、地元の鶏料理を食べ、お土産を購入するという流れが作りやすく、初めて多可町を訪れる人にも適したスポットだ。
ラベンダーパーク多可|季節の花と山並みを楽しむ
加美区轟にある
見頃は例年5月中旬から7月中旬ごろ。品種によって開花時期が異なるため、訪問前に開花状況を調べておきたい。
園内ではラベンダー関連商品の販売や体験教室も行われている。地元の食材を使った卵かけご飯なども楽しめる。
多可町余暇村公園|家族で楽しめる自然公園
中区牧野にある
園内にはバラ園、日本庭園、冒険広場などが整備され、長いローラー滑り台や遊具もある。
バラの見頃は春から初夏と秋。紅葉は例年11月上旬から下旬ごろが目安だ。季節によって異なる景観を楽しめる。
観光スポットの位置関係
観光を計画するなら、加美区の棚田・道の駅・ラベンダーパークを組み合わせるコースと、中区の余暇村公園を訪れるコースに分けると効率的だ。
【食と伝統産業】播州百日どり・播州ラーメン・播州織の魅力
多可町の楽しみは景色だけではない。食文化と伝統産業にも、地域の歴史が色濃く残っている。
播州百日どり|約100日かけて育てる地元ブランド
名前のとおり、約100日間かけてじっくり育てることが特徴。一般的な鶏肉とは異なり、肉のうま味を引き出すために時間をかけて飼育する。
観光情報を扱う日本観光振興協会のJAPAN 47 GOでは、肉のうま味成分であるイノシン酸がピークに達するまで約100日間育てることや、細やかな繊維質による食感が紹介されている。
おすすめの楽しみ方は次のとおり。
- 道の駅の播州百日どり定食
- チキンカツ
- 鶏肉を使った釜飯
- 地元飲食店の鶏料理
地元の農業と食文化が直接結びついた特産品であり、観光の際にはぜひ味わいたい。
播州ラーメン|甘口しょうゆスープの秘密
最大の特徴は、しょうゆベースの甘いスープ。
見た目は一般的なしょうゆラーメンに近いが、口にすると独特の甘みを感じる。
この甘さの背景には、播州織の歴史がある。
昭和30年代、播州織の工場が盛んだった時代、西日本各地から多くの若い女性が織物工場へ働きに来ていた。その女性たちの好みに合うよう、甘めのしょうゆスープが工夫されたことが由来の一つとされている。
ただし、播州ラーメンには統一されたレシピがあるわけではない。店によって甘みやスープの味わいは異なる。
多可町内では、例えば中区森本の「畑やんラーメン」が知られている。甘口の播州ラーメンを提供する店で、地元の食文化を楽しめる。
播州織|北播磨を代表する伝統産業
最大の特徴は、糸を先に染めてから織り上げる「先染め」という技法。
染めた糸を組み合わせることで、チェックやストライプなど、色彩豊かな模様を生み出す。
その起源は、1792年ごろ、現在の西脇市比延町の宮大工・飛田安兵衛が京都の西陣から織物技術を導入したことにあると伝えられている。
播州織は西脇市だけの産業ではなく、多可町も生産地域に含まれる。特許庁の地域団体商標でも、西脇市・加西市・加東市・丹波市・多可郡多可町で生産される先染め織物として登録されている。
多可町の産業を理解するうえでは、山田錦や杉原紙だけでなく、播州織という地域全体の産業も重要な存在だ。
【アクセス・行き方】大阪・神戸から多可町へ行く方法
多可町には鉄道駅がないため、車またはバスを利用するのが基本となる。
車で行く場合
町の公式交通案内では、主なアクセスとして次のルートが紹介されている。
| 出発地点・IC | 多可町までの目安 |
|---|---|
| 中国自動車道・滝野社IC | 約20km |
| 中国自動車道・加西IC | 約17km |
| 播但連絡道路・市川南ランプ | 約21km |
| 北近畿豊岡自動車道・氷上IC | 約20km |
町内を通る主要道路は国道427号。中区と加美区を縦断するため、観光スポットを巡る場合にも利用しやすい。
電車・バスで行く場合
公共交通の場合は、JR加古川線の西脇市駅が最寄り駅となり、そこからウイング神姫の路線バスを利用する。
大阪方面からはJR福知山線で谷川駅まで向かい、そこから町役場方面へ移動するルートもある。
町の公式アクセス案内では、大阪駅から谷川駅まで約1時間20分、谷川駅から役場まで約16kmとされている。
神戸方面からは、三宮からJR加古川駅・西脇市駅方面へ向かい、バスに乗り換える方法がある。
交通手段の選び方
| 交通手段 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自家用車 | 複数の観光地を巡る人 | 山間部の運転に注意 |
| レンタカー | 遠方から観光する人 | 事前予約が便利 |
| 電車+バス | 車を使わない人 | バスの接続・運行時刻を確認 |
| 高速バス+路線バス | 大阪・神戸方面から訪れる人 | 乗り換えが必要 |
観光なら車が便利だが、公共交通だけでも訪問は可能。ただし、棚田や山間部の施設を複数巡る場合は、バスの時刻や移動距離を考慮して計画を立てたい。
【移住・定住支援】多可町の暮らしやすさと支援制度を検証
自然に囲まれた生活に魅力を感じる人にとって、多可町は移住先の候補になる。
ただし、観光で感じる住みやすさと、実際に生活するうえでの利便性は別の問題だ。
多可町の住みやすさを判断する4つのポイント
1.自然環境を重視する人には魅力的
山林面積は約148平方キロメートルで、町の総面積の約79.8%を占める。
田園や川、山が身近にあり、自然の中で落ち着いた生活を送りたい人に適した環境だ。
2.自家用車の必要性を考える
町内に鉄道駅がないため、通勤や買い物、通院などの日常生活では、居住地と目的地の距離やバスの運行状況を確認する必要がある。
3.住宅の状態を慎重に確認する
空き家や古民家を購入する場合、建物の耐震性、断熱性能、水回り、修繕費、土砂災害リスクなどを確認したい。
4.仕事と収入の見通しを立てる
移住後の仕事を町内で探すのか、近隣都市へ通勤するのかによって、住む場所の選択も変わる。
2026年度の移住・住宅支援制度
多可町では、住宅取得や空き家活用、新婚世帯の生活などを支援する制度を設けている。
代表的なものを紹介する。
| 支援制度 | 主な内容 |
|---|---|
| 住宅助成事業 | 新築・中古住宅購入・リフォームなどを支援 |
| 多世代住宅助成 | 多世代での居住に関する住宅支援 |
| 住宅ローン利子助成 | 住宅ローンに関する助成 |
| 空き家活用支援 | 条件を満たす空き家の改修費を補助 |
| 結婚新生活支援 | 新婚世帯の住宅取得・家賃・引っ越し費用などを補助 |
| お試し住宅 | 移住前に町内で一定期間生活を体験 |
新婚世帯は最大60万円の補助対象
2026年度の多可町結婚新生活支援事業では、一定の条件を満たす新婚世帯に対し、住宅取得費やリフォーム費、家賃、引っ越し費用などを補助している。
補助上限は次のとおり。
- 夫婦ともに29歳以下:最大60万円
- それ以外の対象世帯:最大30万円
主な条件は、夫婦の合計所得が500万円未満であること、婚姻時に夫婦とも39歳以下であること、双方または一方が多可町に住民登録を持つこと、5年以上の居住意思があることなどだ。
婚姻日や対象経費、申請期限にも条件があるため、実際に利用する際は町の最新案内を確認したい。
お試し住宅で移住前の暮らしを体験
多可町には、移住希望者が実際の生活環境を確認できる「お試し住宅」がある。
利用期間は1か月以上、原則1年以内。観光旅行ではなく、生活環境や住まい、地域との相性を確かめるための制度だ。
また、兵庫県外から見学する一定の条件を満たす人には、現地見学の交通費や宿泊費の補助もある。
補助額は対象経費の2分の1で、1世帯につき最大4万円。宿泊費については上限1万円となっている。事前に定住推進課との日程調整や申請が必要だ。
なお、2026年度の空き家活用支援事業は、町の公式案内で申込受付終了とされている。年度内の制度であっても、予算上限などによって受付が終了する場合があるため注意したい。
【プロの結論】多可町への移住が向いている人・慎重に検討したい人
多可町の暮らしは、都市部の便利さよりも自然環境や地域とのつながりを重視する人に向いている。
| 向いている人 | 慎重に検討したい人 |
|---|---|
| 自然の近くで生活したい | 駅近の生活を最優先する |
| 車で移動できる | 車を運転できず移動範囲が限られる |
| 農業や地域産業に関心がある | 仕事の選択肢を都市部と同じ水準で求める |
| 地域住民との交流を楽しめる | 地域活動への参加を避けたい |
| 古民家や空き家の活用に興味がある | 住宅の維持管理に時間や費用をかけたくない |
大切なのは、支援金の金額だけで移住を決めないことだ。
まずはお試し住宅や現地見学を活用し、平日の交通、買い物、医療機関までの距離、地域の雰囲気を確認することが、移住後のミスマッチを防ぐ現実的な方法になる。
【多可町に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:多可町の人口は2026年現在何人ですか?
A1:2026年10月1日現在、17,859人です。男性8,700人、女性9,159人、世帯数は7,715世帯となっています。
Q2:多可町は何の発祥の地として有名ですか?
A2:山田錦、杉原紙、敬老の日の3つの発祥に関わる町として知られています。特に敬老の日は、1947年に旧野間谷村で開催された敬老会が歴史的な出発点です。
Q3:多可町のおすすめ観光スポットはどこですか?
A3:岩座神の棚田、道の駅 杉原紙の里・多可、杉原紙研究所、ラベンダーパーク多可、多可町余暇村公園などがおすすめです。
Q4:多可町へ電車で行くことはできますか?
A4:町内に鉄道駅はありませんが、JR加古川線の西脇市駅などから路線バスを利用してアクセスできます。複数の観光地を巡る場合は車が便利です。
Q5:多可町の特産品やご当地グルメは何ですか?
A5:播州百日どり、山田錦、杉原紙、播州織などが代表的です。グルメでは甘口スープが特徴の播州ラーメンも知られています。
Q6:多可町への移住には補助金がありますか?
A6:あります。住宅購入・リフォーム関連の助成、新婚世帯向けの結婚新生活支援、お試し住宅などが用意されています。対象者や受付状況は制度ごとに異なります。
まとめ:多可町は3つの発祥と自然、地域文化が息づく兵庫の町
多可町は、2026年10月1日現在の人口が17,859人の兵庫県北播磨地域の町だ。
人口減少という課題を抱える一方、山田錦、杉原紙、敬老の日という3つの発祥に関わる歴史的な価値を持っている。
観光では岩座神の棚田や杉原紙の里、ラベンダーパーク多可など、自然と伝統文化を楽しめる場所がそろう。播州百日どりや播州ラーメンなど、地域に根付いた食文化も魅力だ。
移住先として考えるなら、住宅支援制度だけでなく、交通手段、仕事、買い物、医療環境なども含めた総合的な判断が必要になる。
多可町の本当の魅力は、全国に誇れる歴史文化と、自然に根差した日々の暮らしが同じ地域に共存していることにある。
人口減少への対応と伝統産業の継承、移住者と地域住民の交流をどのように両立させるか。それが、これからの多可町の持続可能性を左右する重要なテーマとなる。 (出典: 多 可 町(Yahoo!ニュース))