【直木賞受賞理由】朝倉かすみ『けんぐゎい』が満場一致で選ばれた理由

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【直木賞受賞理由】朝倉かすみ『けんぐゎい』が満場一致で選ばれた理由
【直木賞受賞理由】朝倉かすみ『けんぐゎい』が満場一致で選ばれた理由
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『けんぐゎい』
朝倉かすみ/光文社
第175回直木賞
江戸時代を舞台に、社会の周縁に置かれた女性たちの生き方を描く時代小説。

「圏外」に置かれた女性たちの生き方を描く

芥川賞直木賞候補
【画像】芥川賞 直木賞 候補 関連ショット

『けんぐゎい』の主人公は、ふゆという女性だ。

江戸時代、顔に痘痕がある利発な姉ふゆと、容姿に恵まれた妹りよは、幼い頃に父を亡くし、それぞれ異なる境遇で奉公に出される。

ふゆは奉公先で過酷な経験をし、妊娠する。その後、現人神と崇められる女医者との出会いをきっかけに、自らの人生を大きく変えていく。

作品が描くのは、外見や身分、社会的な立場によって、一般的な価値観の外側に追いやられた女性たちの姿だ。

同じような境遇に置かれた人々が、自分らしく生きられる場所を築いていくという物語には、時代小説でありながら現代にも通じるテーマがある。

受賞を決定づけたのは物語の力と祈り

芥川賞直木賞候補
【写真】芥川賞 直木賞 候補 近影・注目カット

朝日新聞の講評報道によると、最初の投票では蝉谷めぐ実さんの『見えるか保己一』と同点だった。

議論では、作品後半の時代考証について疑問も出た。しかし、後半部分を主人公ふゆが最後に見た夢のようなものとして読む解釈も示され、2回目の投票で満票となった。

選考委員を代表して講評した辻村深月さんは、作品について、つらい描写を上回る力強さと祈りが後半に用意されているという趣旨の評価を示した。

重要なのは、歴史的な正確さだけではなく、作品全体が読者に何を伝え、どのような読後感を残すのかが議論された点だ。

朝倉かすみは3度目の候補で直木賞を受賞

芥川賞直木賞候補
【資料】芥川賞 直木賞 候補 報道・メディア記録

朝倉かすみさんは1960年生まれ、北海道出身の作家。

2003年に「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞を受賞し、2004年には「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞。2005年に作家デビューした。

代表作として知られる『田村はまだか』『平場の月』『よむよむかたる』などがある。

特に『平場の月』は山本周五郎賞を受賞し、第161回直木賞候補にも選ばれた。また、『よむよむかたる』も第172回直木賞候補となっている。

今回の『けんぐゎい』は、3度目の候補入りでつかんだ直木賞だった。長年の創作活動と、これまでの候補作を経た受賞という点でも注目される。

【芥川賞と直木賞の違い】ジャンル・対象作品・選考基準を比較

芥川賞と直木賞は、同じ日に発表されることが多いため、一つの文学賞のように捉えられることがある。

しかし、両者は正式名称も対象作品も異なる独立した文学賞だ。

芥川賞は純文学、直木賞はエンターテインメント小説

日本文学振興会の公式FAQでは、両賞の対象を明確に区別している。

芥川龍之介賞は、新進作家による純文学の中・短編作品が対象。雑誌や同人雑誌に発表された作品から選ばれる。

一方、直木三十五賞は、新進・中堅作家によるエンターテインメント作品が対象。長編小説や短編集など、単行本として刊行された作品が中心となる。

両賞の比較で押さえておきたい5つのポイント

- 正式名称: 芥川龍之介賞/直木三十五賞
- 対象ジャンル: 純文学/エンターテインメント文学
- 主な対象作家: 新進作家/新進・中堅作家
- 主な発表媒体: 文芸誌/単行本
- 選考時期: 年2回、7月と翌年1月

ただし、純文学だから難解、エンターテインメントだから読みやすいという単純な分類ではない。

芥川賞作品にも強い物語性を持つものがあり、直木賞作品にも歴史や社会、人間の内面を深く掘り下げる作品がある。

今回の『ゾンビ回収婦』と『けんぐゎい』も、それぞれの賞の特徴を踏まえながら、独自の文学的な表現を評価された作品といえる。

どちらを読むべき?読者の好みによる選び方

読書の好みおすすめの賞
人間の内面や心理を深く読みたい芥川賞
独創的な世界観や実験的な表現が好き芥川賞
ストーリーの展開を楽しみたい直木賞
歴史や社会を背景にした長編を読みたい直木賞
文学作品を幅広く開拓したい両方

芥川賞と直木賞は優劣を競う関係ではない。異なる方向から日本文学の魅力を伝える賞として、それぞれの候補作を読み比べることにも意味がある。

【選考の仕組みと歴史】候補作は誰が選ぶ?受賞作が決まるまで

芥川賞・直木賞の創設は1935年

両賞が誕生したのは1935年(昭和10年)。

文藝春秋を創刊した菊池寛が、友人であった芥川龍之介と直木三十五の業績を記念して創設した。

第1回の受賞作は次のとおりだ。

- 芥川賞:石川達三『蒼氓』
- 直木賞:川口松太郎『鶴八鶴次郎』『風流深川唄』など

当初は無名または新進の作家を世に送り出すことを目的としていた。現在まで続く日本を代表する文学賞へと発展した背景には、新しい作家と作品を発掘するという創設時の理念がある。

候補作はどのような流れで決定する?

選考は、作品が発表されてから受賞発表まで、いくつかの段階を経て進められる。

1. 対象作品の選定

上半期は前年12月から当年5月まで、下半期は6月から11月までに刊行された作品が対象になる。

2. 予備選考

対象作品の中から、複数回の予備選考を経て最終候補作が絞られる。

3. 最終候補の発表

日本文学振興会が候補者と作品名を公表する。第175回は6月11日に各賞5作品が発表された。

4. 選考委員による討議

作家などで構成される選考委員が候補作を読み、投票や討議を通して受賞作を決める。

5. 受賞結果の公表

選考会終了後、受賞作品と作者が公表される。受賞作は1作品または2作品となる場合があり、該当作品なしという結果もあり得る。

選考委員は何を基準に評価するのか

芥川賞・直木賞には、読者が点数で確認できる統一的な採点表が公開されているわけではない。

作品の完成度や独創性、表現力、構成、テーマの掘り下げ方など、複数の観点から議論される。

今回の選考結果を見ると、その特徴がよく分かる。

芥川賞では、仮想世界を小説として成立させる力が評価された。直木賞では、時代背景に対する議論を経ながらも、登場人物の生き方を描く物語の力が受賞につながった。

つまり、題材が珍しいことや話題性が高いことだけでは、受賞は決まらない。作品の表現がどれだけ説得力を持ち、文学として独自の価値を生み出しているかが問われる。

芥川賞と直木賞は一般公募ではない

意外に知られていないのが、両賞とも一般読者や作家が自由に応募する公募型の文学賞ではないという点だ。

芥川賞は雑誌などに掲載された作品、直木賞は出版された書籍などが対象となる。

そのため、新人作家が受賞を目指す場合も、単純に応募用原稿を送るのではなく、作品を発表し、選考対象となる機会を得ることが必要になる。

【歴代受賞作】芥川賞・直木賞を代表する作家と作品

1935年の創設以来、両賞からは多くの著名作家と文学作品が生まれてきた。

第175回の受賞作をより深く理解するには、過去の受賞作を振り返ることも有効だ。

芥川賞の歴代受賞作

芥川賞は、新しい表現や文学的な挑戦を評価してきた歴史がある。

代表的な受賞作には、次のような作品がある。

- 石川達三『蒼氓』:第1回受賞作。
- 安部公房『壁』:第25回受賞作の一つ。
- 村上龍『限りなく透明に近いブルー』:第75回受賞作。
- 又吉直樹『火花』:第153回受賞作。
- 宇佐見りん『推し、燃ゆ』:第164回受賞作。
- 市川沙央『ハンチバック』:第169回受賞作。
- 小砂川チト『ゾンビ回収婦』:第175回受賞作。

時代ごとに社会の関心や人間関係の描写が変化していることも、歴代受賞作を読む面白さだ。

直木賞の歴代受賞作

直木賞は、幅広い読者に届く物語性と文学的な魅力を兼ね備えた作品を数多く送り出してきた。

近年の受賞作を中心に挙げると、次のようになる。

- 川口松太郎『鶴八鶴次郎』:第1回受賞作の一つ。
- 東野圭吾『容疑者Xの献身』:第134回受賞作。
- 米澤穂信『黒牢城』:第166回受賞作の一つ。
- 千早茜『しろがねの葉』:第168回受賞作の一つ。
- 万城目学『八月の御所グラウンド』:第170回受賞作の一つ。
- 嶋津輝『カフェーの帰り道』:第174回受賞作。
- 朝倉かすみ『けんぐゎい』:第175回受賞作。

直木賞では、歴史小説、ミステリー、人間ドラマなど、さまざまなジャンルの作品が受賞している。

受賞作なしとなるケースもある

もう一つ押さえておきたいのが、芥川賞・直木賞には必ず受賞者が出るという決まりがないことだ。

実際、日本文学振興会の歴代受賞者一覧には、該当作なしとなった回も記録されている。

例えば、第173回芥川賞は該当作なし、第173回直木賞も該当作なしだった。

候補作が発表されても、選考委員が受賞にふさわしい作品がないと判断すれば、受賞者を出さない選択ができる。候補入りと受賞は、明確に分けて理解する必要がある。

【芥川賞直木賞候補】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:2026年の第175回芥川賞・直木賞の候補発表日はいつ?

2026年6月11日。芥川賞と直木賞から各5作品、合計10作品が候補に選ばれた。

Q2:第175回芥川賞・直木賞の受賞作は何?

2026年7月15日に発表され、芥川賞は小砂川チトさんの『ゾンビ回収婦』、直木賞は朝倉かすみさんの『けんぐゎい』に決定した。

Q3:鈴木涼美の『悪い血』は芥川賞を受賞した?

第175回の芥川賞候補には選ばれたが、受賞には至らなかった。最終的には小砂川チトさんの『ゾンビ回収婦』が受賞した。

Q4:蝉谷めぐ実の『見えるか保己一』は直木賞候補だった?

候補だった。第175回直木賞の最終候補5作品の一つで、朝倉かすみさんの『けんぐゎい』と最初の投票で同点になるなど、選考で注目された。

Q5:芥川賞と直木賞のどちらが上の賞?

上下関係はない。芥川賞は純文学、直木賞はエンターテインメント作品を主な対象とする別々の文学賞であり、異なる観点から作品を評価している。

Q6:芥川賞・直木賞に一般人が応募できる?

両賞とも一般公募ではない。芥川賞は雑誌などに発表された作品、直木賞は出版された書籍などが選考対象となる。

まとめ:2026年の受賞結果から次の文学賞にも注目

第175回芥川賞・直木賞は、6月11日の候補発表を経て、7月15日に受賞作が決定した。

今回の結果を整理すると、次の2作品が2026年上半期の受賞作となる。

- 芥川賞:小砂川チト『ゾンビ回収婦』
- 直木賞:朝倉かすみ『けんぐゎい』

『ゾンビ回収婦』はAIによる失職と仮想現実を組み合わせた独創的な世界観が評価され、『けんぐゎい』は社会の周縁に置かれた女性たちの生き方を描く物語の力が高く評価された。

また、鈴木涼美『悪い血』や蝉谷めぐ実『見えるか保己一』など、受賞には至らなかった候補作にも、それぞれ異なる文学的な魅力がある。

【プロの結論】

芥川賞・直木賞を楽しむ際に大切なのは、受賞したかどうかだけで作品の価値を判断しないことだ。

候補作は、予備選考を通過し、選考委員による最終的な議論の対象となった作品である。受賞作はもちろん、候補に残った作品にも読む価値がある。

作品選びに迷ったら、純文学の表現や人間心理を味わいたい人は芥川賞候補から、物語の展開や歴史・社会を背景にしたドラマを楽しみたい人は直木賞候補から手に取るとよい。

今後の動向として、日本文学振興会は第176回の選考会を2027年1月20日(水)に予定している。次の候補発表とともに、新しい作家や作品がどのように評価されるのかにも注目したい。 (出典: 芥川賞 直木賞 候補(Yahoo!ニュース))